幼馴染にフラれたらサッカー部を追放されたので、もう一人の幼馴染と陰キャになる事にした。
島風
第1話 幼馴染に振られた
今日、僕はクラブ活動のサッカー部を追放された上、失恋をした。失恋の相手は僕の隣の家に住んでいる幼馴染 、僕と同じ高校二年生。恋人を奪った男はサッカー部の新人、藤堂…。彼は僕の恋人を奪うだけでなく、僕をサッカー部から追い出した。
僕の恋人は子供の頃からの幼馴染だった。幼稚園から同じ中学、同じ高校へと示しあって進学した。でも、高校に上がるまで僕は彼女を異性としては見ていなかった。いつも一緒にいたから......彼女は空気の様な存在。一緒に学校に登校して、一緒に下校して......毎朝僕を起こすのもベタだが彼女の仕事だった。
僕の名前は
だけど、告白したのは高校一年生の一学期の中間テストの頃だった。高校に入ったら、色々な事が変わった。それまで、空音が男子と話すのは僕位としかなかった。でも、何故か色々な男子に声をかけられた。あれ? 空音、もしかしてモテるの? なんて事に気がついて、焦って、意を決して、スマホで空音へLi〇eを入れた。
…昼休みに空音を屋上に呼び出す。わざわざ…
それは誰でも高校生ならドキドキしてしまうイベントだろう。だって空音とはいつも一緒に登校して、下校もする。わざわざ呼び出すなんて、告白イベントの香りしかしないだろ? 僕がソワソワするのも、まあ無理はないよね?
…は、はは、だから、僕があの時、屋上で空音と向かいあってた訳だけどね、じ、じ、自分でも驚くくらいお、お、おおお落ち着いてたんだ。だ、だ、だって、空音とは毎日会ってる訳だし、僕の方が1か月お兄さんな訳だし。お、お、お裁縫だって得意だし。保健体育の成績、小学生の間、オールAだったし。
「えっ? 何かな悠馬? 突然?」
「いや、ちゃんとした方がいいと思って」
「えっ? 何をちゃんと?」
僕は空音を見つめた。空音が真っすぐに僕を見返してきてくれる瞳があまりにも綺麗だったから。その目はおごりなんかじゃなくて期待している目。そんな目で見られると恥ずかしい。顔がにやけそうになっていたけど、でも、そこを必死でこらえた。
「やだ、悠馬! 何をそんなに見てるの?」
「……ずっと、見ていた」
「……えっ?」
僕の胸はキュンとした。『ずっと見ていた』。その言葉の重さが自身にのしかかる。僕にとってこれ以上ない言葉。僕の空音への気持ちの全て。
「空音、好きだ。君と付き合いたい、彼氏彼女として、駄目かな?」
「……」
空音は沈黙してしまった。即答して欲しい。だけど、混乱しているのか、すぐに返してくれない。何か考え込んでいる。心にぐっと何かが来た。気がついたら、空音は泣いていた。
「どうしたの? 何で泣くんの? 僕じゃ嫌なの? ごめんね、君に負担をかけたのかな?」
「……嬉しい」
僕を見上げながら、空音はふわりと笑った。
そして、濡れ続けた目も拭わずに言葉を綴った。
「……私もずっと好きだった」
もう、なんで空音はこんなに可愛いかな!? 僕まで泣けてきたよ! でも、嬉しい。こうして僕達は彼氏彼女の関係になった
だけど、それから一年後、それは起きた。僕と空音が下校を一緒にしない時なんて滅多にないのに空音は、
「今日、真白にカラオケ誘われたんだ。今日は先に帰ってもらっていいかな?」
驚いた。空音が僕と下校しないなんて、風邪をひいて休んだ時や特別な時だけだった様な気がする。でも、空音と同じ幼馴染の真白が仲がいいのは知っていたし、そこまで束縛するつもりはない。それ位許さないと未来の旦那失格だよな!
「わかった。今日は一人で帰るよ。カラオケ楽しんでな!」
「うん、ありがとう。今度、悠馬ともカラオケ行きたいな」
「うん、誘って、楽しみにしているよ!」
でも、僕は下校途中にそこにはいる筈が無い人から声をかけられた。
「……悠馬? 今日は空音はどうしたの?」
えっ? って驚くしかない。だって、空音は真白と、今、僕に声をかけてくれた真白とカラオケに行っている筈なんだから。
動揺したけど、僕は空音を信じていた。そんな筈はない。真白と別れて気晴らしに趣味の中古レコードの店へ向かった。そして、途中僕は見てしまった。3か月前に転校してきたイケメン
みたくないものを。見てしまった。穏やかな笑みを浮かべて並んで歩く二人。手をつないだ空音の笑顔。あんな顔見た事なかった。初めて見た。恋する空音の顔を......
それから、しばらく空音はそのまま僕と付き合い続けた。だけど、やたらとスマホを気にする様になり、僕の話をちゃんと聞いている? て、感じになった。
そして、2週間後、 サッカー部で、
「宗形…。悪いがサッカー部を辞めてくれ…お前にはみな閉口しているんだ。見当外れのパスばかり出して、思い上がりばかりのプレイにみな嫌気がさしているんだ」
「なっ! そんな!? 僕はその場で一番適した位置にいる人にパスを出しているだけだよ。ひとりよがりだなんて、酷いよ」
「じゃ、なんで俺にパスを出さないいだ? 嫉妬か? 見苦しいぞ?」
藤堂は三ヶ月前に転校して来て、入部したばかりだけど、圧倒的な実力でレギュラーをもぎ取り、今はエースストライカーだ。でも、僕だって、十分考えたパスを出していたんだ。決して、嫉妬なんかで、藤堂へのパスを出し渋った訳じゃない。
「先生はどう思われますか?」
「宗形のパスはいつも良くわからないし、パスを取るのもみなしんどそうだ。それに藤堂がエースストライカーなのに、あまりパスを出さないのも変だ。藤堂の言うことは尤もだ」
「じゃあ?」
「ああ、宗形、退部届を出せ。そうでないと内申書に響くぞ」
「そ、そんな…僕は守備に貢献してきたじゃないですか!!」
「宗形、守備なんておまけのお遊びみたいなもんなんだ。それ位わかれよな!」
僕はサッカー部顧問の先生の言う通りにするしかなく、泣きながら、その場で退部届を書かされた。
その上、下校の時…空音が話があるからと呼びさだれた。そして、
「あのね? 悠馬…」
「え---? なに?」
僕の幼馴染は別れを告げた。
「私達、別れよう……」
「え?」
「悪いのは私なのはわかってる。全部……私が悪い……。でも、私、キチンとしたいから……」
「あ、ああ、察しはついてたよ」
僕は涙を流していた。空音、僕の彼女、僕の幼馴染。わかってはいた。だけど、僕の脳裏には子供の頃からの記憶が走馬灯の様に蘇った。子供の頃、「悠馬のお嫁さんになる」そう言ってくれた。高校一年の始めに、僕は空音に告白をした。空音は泣いて喜んでくれた。付き合い初めて一ヶ月目の時、学校の帰り道、寄り道した河原のあぜで初めてのキス。二人は将来を誓いあった。「何があっても一緒になろうね」空音はそう言ってくれた。それが、今、わずか3ヶ月前にあった転校生の藤堂と恋する間柄になっている。僕とは17年も関わっているのに!
それにサッカー部追放の件も藤堂の意向だろう。彼は僕の事が嫌いみたいだった。
嫉妬、怒り、屈辱、僕の中にたくさんの負の感情が沸いた。
僕達の17年の歴史はこうして、たった一言で終わった。
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