第11話 「お兄ちゃんの好きにして」
目覚めるとアメリア……じゃない、兎月が俺を見下ろしていた。
「なんで観戦モードにパスワードかけたの?」
開口一番、ムスッと頬を膨らませた妹が俺に抗議の視線を投げかける。
「ゲームくらいプライベートで楽しみたいからな。それくらいいいだろうが」
そもそもゲームなんだよ。誰にも邪魔されずにやりたいってのは、変なことじゃないだろう?
「よくない」
「なんでだよ?」
「……お兄ちゃんが心配だから」
「いやいやいや、ただのゲームだろ?」
苦笑しながらそう言い返したところで、兎月の表情が崩れて泣きそうな顔になる。
「お兄ちゃんを取られたくないの!」
そして、いきなり抱きついてきた。
「おまえ、ずっと俺のこと避けてて、冷たい態度取ってたじゃないか。意味わからないよ」
俺は冷静さを取り戻すために、そう返答する。でも、頭の中は混乱していた。
「わたしがお兄ちゃんを避けていたのは……兄妹だから……好きになっちゃいけないと思ったから」
え? この台詞は、前に俺が夢の中で聞いたことのある兎月の言葉だ。
「……」
「お兄ちゃんがゲームに夢中になっているのは別によかった。下手にカノジョなんか作られるよりはね」
あの時の言葉と一字一句違わない。あれは予知だったのか?
「おいおい、いくら俺がモテないからってからかうのも……」
前に兎月に返したのと全く同じ言葉。これでもし、あの時のような反応をしたら……。
「わたしの方がずっと前からお兄ちゃんのことが好きだった。だから悔しかったの。たかがゲームのキャラだってわかっていても、お兄ちゃんを獲られるのがイヤだったの」
嬉しいはずなのに、背筋がゾッとした。
でも、両思いだったというのは変わらない。
「……」
「ねぇ、お兄ちゃん。わたしとアメリアって子のどっちが好き?」
「バカ。アメリアはただのサポートキャラだ。あいつがおまえに似てるのは、俺がそうしたかったからだ。察しろよ……いや、察しろっていう方が酷いな。俺も兎月のことが好きで好きでたまらないんだ。だから、ゲームの中でも兎月に会いたかったんだ」
前回以上のすげえ恥ずかしいことを告白してしまう。両思いなのであれば、こんなのはまだ序の口だ。
「お兄ちゃん……」
潤んだ瞳が俺を見上げる。そして、どちらからともなく唇を合わせた。
「うれしい」
そのままベッドへと兎月と一緒に倒れ込む。
「お兄ちゃんの好きにして」
拒む理由はない 愛しているのだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます