156 ロールケーキの悪夢

 こんにちは。


 6/6はロールケーキの日らしい。SNSで流れて来て、今初めて知ったのだけれど。

 ロールケーキで思い出すのは、まだ小学生の頃だったか中学になっていたか。とにかくまだ子供の頃、ロールケーキを作った事がある。

 それまでに私は普通のホール型のデコレーションケーキは何度も作っていたので、平べったく生地を焼くだけだけでいいのだろうと高をくくって作り始めたのだけど結論、ロールケーキとデコレーションケーキでは全くの別物だった。


 それに気が付いたのは、なんと作っている真っ最中。

 材料は味や膨らみ方の差異で違うくらいだろうと思っていたから、レシピ本に書いてある手順を先に読んでいなかったのだ。読んでいたのは材料の所だけ。

 どこが違うって、デコレーションケーキのスポンジ部分の様にただ混ぜて焼けばいいだけではなく、湯煎しながら混ぜたり、オーブンで焼く時もどちらかと言うと蒸し焼きに近い。……たしか、そんなレシピだったと思う。

 実は私が使っていたレシピ本が、どういう訳か鼻歌交じりに素人が趣味で作るようなレシピ本では無くホテルの料理人が教えるセミプロ向けみたいな感じの本だったのだ。もちろん自分で本屋さんで買ったのだけど、なんであんなプロ向きの難しい本を買ってしまったんだろう。

 他にもマジパンでケーキを包み、テンパリングしたチョコレートで光沢を出してコーティングする方法とか、ケーキの上に絞り出しで綺麗に筆記体の文字を書く方法とか、ただのシュークリームじゃなくてスワン型のシュークリームの焼き方とかが載っていた気がする。手放していないから探せばどこかにあるのだけど、もう長い間見ていない。


 そんな本に書いてあるロールケーキのレシピだから、お店で出せる本気のロールケーキの作り方が書いてあるのです。もうね、途中で投げ出しそうになりましたよ……。湯煎しながら混ぜたり、生地の硬さとか色とか指示が多いのです。それを子供が作るのです。初見で。

 でも卵もバターも小麦粉も。もったいなくて途中で「やーめた!」なんて出来ない。だって自分のお金で買いそろえたものではなく、家の食材を使っているので。


 途中から予定していなかった数のボールやお湯や木べらやらが必要になり、イライラしながらでしたが結局最後までなんとか作りました。苦労した生地は確かに肌理が細かくて、ものすごくしっとりしていて、今まで作っていたスポンジケーキと全く違う事をそこで初めて知ったのです。ロールケーキと普通のケーキとは全くの別物であると。ロールケーキの生地は例えるなら高級すし屋やおせちの卵焼きの様な。とにかくしっとり。なのにフワフワ。

 生地は何とか焼けたのだけれど、最後の最後でケーキを巻く技術が……あれは本当にすごい技術ですよ。他はレシピ通りにすれば何とかできるけれど、巻くのだけは技が必要です。巻きずしさえ作った事の無かった私には無理でした。案の定巻くことができなかった。あの「のの字」は本当に神業。巻くだけなら出来るんですよ。でもフルーツやクリームを均等に挟みつつ、はみ出さず、しかも押さえつけて生地を抑え過ぎず。

 

 あれ以降私は一度もロールケーキは作ってません。それからしばらくパリブレスト期に入って、リース型のシュークリームばかり焼いていた気がします。あれはまぁ、ちゃんとレシピ通りに作れば出来るので。そして、そこからタルト期に入り、パウンドケーキ期、バナナブレッド期……とどんどん適当な材料の適当な作り方でそこそこ美味しいものが出来るお菓子へと転げ落ちて行きました(笑)そして今はぬか漬け←

 野菜を突っ込むだけの何にもしない、甘くも無い、お菓子でもない……


 人は楽な方に流れていくものですね……あ、私だけか。みんな一緒にしてしまってすみません、



 あれからロールケーキを見るたびに、あの悪夢を思い出すんですよねぇ……

 まずプラモデルでも組み立て式の家具でも、もちろんレシピでも、最初に最後まで一度は目を通さないといけないという事を学びました。同じような物を作った事があるからと、侮っていたら足下を救われる。思い込みはいけませんね。

 そして、プロの技ってやっぱりすごい。今の私でもきっと均等にクリームを挟みながら生地を巻くという事は出来ないだろうなぁ。あれは子供の手だから出来なかったという代物では無かったと思う。

 数千円でプロの技で作られたロールケーキが買えるなんて、なんて素晴らしい世の中!コンビニはパティシエお手製ではないにしろ、もっと安価で買えますからね。

 ほんと、ロールケーキ、侮るなかれですよ。

 そんな話をしていたら、ものすっごくメールケーキが食べたくなってきた。ロールケーキの日だという宣伝の術中にはまっていますよね、コレ……




 

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