茶うさぎから白うさぎへの手紙 2022

115 縺れている

　こんにちは。

　作品が大好きで、個展や販売会がある度にお邪魔している焼き物の作家さんがいるのですが、その方が今日ＳＮＳで、デパートでの展覧会用に作るのは、売り上げが大切だから万人受けするもの（飼い鳥や人気種）を作らなけれ時いけないと嘆いていた。そして誰も目に留めない様なニッチな鳥の作品を二つ作って、やっと気持ちが戻ってきたと。

　その気持ち、すごく分かるのです。

　仕事だと分かっていたって、気が向いたものを気が向いた時に気が向いた順番で気が向いた量を作りたい。だから野良作家なんて事をしている。

　かなりめちゃくちゃな事を言っている事は承知していますが、そういうものなのです。

　だからリクエスト注文は受けない。そうしないと、次にあれを作りたい！と思っても、そちらに手を付けられない。いや、そもそもの話、気分が乗らない。

　この作り方は非常にリスクが高い事は分かっていても、そういう性質なのだから仕方がないというか。わがままなんですよね……とどのつまりは。

　という私も現在、季節の合いに着る薄手のコートの注文を受けてしまっています。

　受注生産は受けていないのだけど、どうしても諦められなくて……と販売していたお店にお客さんから相談があったそうで、先日生地を買いに行ったところ、当初私が仕入れていた金額とそこまで変わらなかったので受けることにしたのです。

　いつまでも忘れられなくて、買わなかった事を後悔する物って私にも有りますからね……気持ちは分かります。

　実は先日、私の友達がそのコートを購入して着てくれていました。

　私自身や私の親は私が作った物を着ることはよくあるのだけど……あぁ、販売店のオーナーさんも時々着てくれていますが、購入したものを来てお出かけしてくれている姿を見るのは初めての経験だったかもしれない。なかなかレアな経験でした。……なんたって全部手作業ですから生産数も少ないですからね。

　自分で言うのもなんですが、丁寧に仕事をしているつもりなので、ストンとしたシルエットが良い感じでした。

　注文を受けたのは、まさにそのコート。

　いやー……なかなか邪魔くさいのです（笑）

　今日やっと裏地をどんなのにするか、セミオーダー方式で聞いてもらって生地が決まったので、明日から始めるのですが今から憂鬱で。

　今は大量に夏用のリネン100%のズボンを作りたい気分だったのです。実際旅行から帰って来てから色々ありながらも三本作りました。

　夏はこのパンツがいいんですよ～、自分でも愛用しているし。履き心地満点。

　うーーーん……、　

　と、こんな事を書いているけれど、やっぱりダメだなぁ。ひねり出して書き始めたけれど、某大国の傍若無人な侵略が始まって以来、頭の中が縺れていて物事を深く考え切れない。

　連日の報道と、独りよがりな理由で人の国を踏みにじっている犯罪に世界はなすすべがない現状。

　そして突然の友達の死に、知床の船の事故が追い打ちをかけて。

　普段船なんて乗るような立地に暮らしていないのに、先日旅行先で高速船に乗ったものだから……なんというか、他人ごとじゃなく感じられてしまって。旅行先で船に乗り命を落とす……

　私の場合、海水浴が出来るほどの心地のいい海でしたが、外海を航行している時の風は大丈夫だと分かっていても恐怖を感じました。帰りは外の席に座ってしまったので。

　業者の良し悪しなんて、旅行者に分かるはずが無いのです……。まだ業者に問題があったのかどうか判断は出ていませんが。

　いつになったら、私の頭の中の団子状の糸の縺れは解けてくれるんだろう。

　テレビで、人気タレントさんのホッと一息つく時はこんな事をしています、という映像を見たのだけど、不思議と言うべきか必然と言うべきか、紹介されていた全員が脳をリセットする行動を取っていてびっくりしました。さすがだな、と。

　それは、脳が退屈するようなぼーっとする時間を作る事。

　一人は蝋燭の光を薄暗い部屋で見続けて、一人はただ壁にもたれて座りボーっと。一人はドラム洗濯機が回るのを見ながらお酒を飲む。全部、脳をデフォルトモードネットワークの状態にして休める行動です。

　人前に出続ける職業だから、他がどんなに忙しくてもそういう時間が必要だと体が求めているという事なのでしょう。

　私もそういう時間を作らないといけないのでしょうね……本当は作業がその役目を果たしてくれている面があったのですが、最近は悲しい事ばかりに目を向けてしまうから。

　今日はお風呂に蝋燭でも持ち込んでみようかなぁ……そんな気力あるだろうか。

　あー、明日はコート作りかぁ……憂鬱だ。