第18話 決闘と勝機と
右手に持つ剣と、左手に持つ水が入れ替わる。
「な!」
剣の間合いの分だけしか、ライカは避けようとはしなかった。だから、紅雄の手から水が発せられるとはつゆとも思わず、その体に見事にぶっかけられる。
頭からかぶり、金髪も、
「へへっ」
「………で?」
してやったりと笑みを浮かべる紅雄に、呆れたような目を向けるライカ。
「こんなことして何がしたかったの? 私の服でも透けさせたかったの? 濡れ透け好み?」
「ちげーよ、バカ!」
「お前の能力は雷を全身に通して発動させる。そして、水は電気を通しやすい。そんな状態で『
「ふぅ……」
閃光が酒場に走る。
ライカは呆れたように肩をすくめ、『
ドスッ……!
紅雄の腹部に鈍痛が走った。
「ぐ……」
「少し勘違いしているようだけど、『
ライカが一瞬で紅雄の眼前に接近し、腹に拳を叩き込んだのだ。
「もう手詰まり? それとも、もしかして、
剣を落とし、崩れ落ちる紅雄をあおるライカ。
紅雄は酒場の床に大の字になって寝転がる。頭の位置がスカートの手前にあって、もうちょと身じろぎすればライカのパンツが見えそうだ。
「
「カデン……っていうのが何なのかわからないけど、濡れて壊れたりはしない。燃えたり、バラバラに切られたりしたら別だけど。私が着ているサンダークロスは特別製でね。
「つまり、そのドレス脱いだら、『
「そういうこと、あ、濡れて私が脱ぐと思った? おあいにく様、『
言葉通り、すっかい乾いた
「………!」
スカートが揺れ、もう少しでパンツが見えそうになる。そこで、紅雄の頭にあるひらめきが浮かんだ。
寝ころんだ状態で背伸びをして、ライカの股の直下に潜り込む。
「ドレスは黄色いのに、パンツは白いんだな」
純白だ。彼女は意外と純情なのかもしれない。
「……ッ⁉」
一方、ライカの顔は真っ赤に染まった。
「この、変態がッ!」
そして、怒りに任せて、紅雄の顔を踏みつける。
「ガッ………!」
ブーツで顔面を踏みつけられて、頭蓋骨が割れるかという衝撃が走る。だが、
「パンツ見られて恥じらうなんて、意外とあんたも乙女なんだな。一つ、聞いていいか?」
紅雄はライカの踏みつけている足をがっちりと、左手で掴んだ。
「質問に答えるのはいいけど、その前にそこをどいてくれない?」
恥ずかしそうに唇を震わせ、踏んでいる足に更に力を込める。
「イデデデデッ! いや、ここがいい、この位置じゃないとダメだ」
頭蓋骨にライカの体重がかかり、軋み続けているというのに、紅雄は断固としてそこに居座った。
「そんなに私のパンツが見たいの?」
「そう、見るのが大事だ。俺によってあんたが辱められたというファクターが、何よりも大事なんだ」
ブーツを握る左手が離れ、少し、ライカの足の位置がずれる。
紅雄の目はまっすぐ上を見据えていた。確かな覚悟と信念が宿った瞳で、白いパンツを凝視していた。
「どういう意味?」
「今、こうやって俺があんたのパンツを見ているのに、どうしてあんたは『
「いや……どうしてって言われても……」
ライカは首を傾げた。そんなことを言われても、無意識の行動だ。パンツを見られた羞恥で怒りが沸き、逃げるような臆病ともとれる行動をとりたくなかったから、紅雄に制裁を与えたかったから。だから、紅雄の頭をそのまま踏みつけた。深く考えるとそんなところだろうか。
つまり、結局は———、
「頭に来たから?」
「そう、あんたは俺に辱められて、頭に血が上った。冷静な判断を欠いたんだ。だから、俺の射程範囲に入っても、『
「敗因って。負けるって? 私が? ハッハッ、強がりを。ありえない」
何を馬鹿なと、ライカは笑いとばした。
「俺の勝ちだ。ライカ」
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