秘密基地
ポリエチ
第1話 冬の思い出
俺たちには秘密基地がある。
川にかかった橋を越えて、獣道を通って大体6分くらい歩いたところで
一番俺の家が近い。
秘密基地には毎日集まっていた。
でもちょうどその日は雪がひどくて、到底辿り着けずに5時になるだろうということで、集まらなかった。
もちろん俺も行かなかった。
その夜、親たちがバタバタしている音で目を覚ました。
寝ぼけて何を言っているかわからなかったが、段々と目が覚めて聞き取れた。
「坂上さんの娘さん行方不明なの!?」「大変!!」
どうやら俺たちのクラスの坂上という女子が行方不明になったようだった。
親たちはせっせと探しに行く準備をしていた。
「家から出ちゃダメよ。危ないから」というと両親は探しに出かけた。
そしてその夜は見つからなかった。
学校へ行ってもその話題で持ちきりだっった。
先生も「みなさん見かけたり情報を持っていたら教えるように」と言っていた。
「バカじゃん」「見つからなそー」「大丈夫かなぁ?」
とみんなは笑っていた。
誰一人として生徒は真剣になってはいなかった。
俺も他人事としか考えていなかった。
帰り道、今日は秘密基地に行こうという話になった。
五人で道を歩きながら
「もしかしたら死んでるかもな」
「それはうける。ネタになるな」
「いやでも、、そういうこと言うのはダメだと思うよ」
「お前あいつが好きなのか?」
「違うよう。ただ僕は」
などとふざけていると不意に先頭のやつが
「ヒュっ」と言葉にならない声を上げた。
なんだなんだとそいつの目線の先を見ると俺たちは凍りついた。
裸で血を雪に染み込ませ倒れている坂上がいた。
青白く固まった坂上はおそろしいほどにひどい有様だった。
そんな残酷で惨たらしい状況と初めてみるクラスの女子の裸に
俺たちは動けなくなっていた。
あと数歩歩いたら秘密基地なのに、、、
どうしたら、
本当に見つけてしまった。
死んでる。などと色々な思いが俺の中で渦巻いた。
みんな目を見開いたまま動かない。
時が凍りついたかのようだった。
「おいこれ、最悪だ。どうすんだ。早く言わないと」
ぽつりぽつりと言い始めた言葉で正気に戻り俺たちは走った。
来た道を全力で。
不思議と「キャー」と叫び声をあげる奴はいなかった。
ただ、とりあえず早く家に着きたい。その一心で。
親に帰ってからすぐに全てを話した。帰ってからも景色がフラッシュバックして緊張が解けなかった。
幻だったと思っても消せない記憶が俺たちには染み付いてしまった。
俺はもう秘密基地には近寄れない。
トラウマもあるけど、坂上を見つけた時に雪に足跡が残っていた。
不自然に思って目で辿ったら秘密基地に続いていた。
秘密基地からは女物の服を握りしめた男がこちらを覗いているのが俺には見えた
その男がそっと俺にしーっとやったのも。
秘密基地 ポリエチ @porietieti
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