第78話 ルナとシエナを剣士にすることにした

「なあ、流れ的に普通、俺が聖剣抜くことにならんか?」


「ノア君、現実を見ようね。事実から目を離しちゃダメだよ」


「そうなのです。ルナさんは無垢の心を持っていたから聖剣が抜けたのです」


「あ、あの。僕、ご主人様を差し置いて__ごめんなさい;汗」


「い、いや、気にしないでくれ」


俺はアリス達に言いように腹は立ったが、ルナには気にしないように言った。


「ノア君? 気にしないでという割に、すごくクヨクヨしてるよね?」


「そうなのです。未練タラタラでさっきから聖剣を物欲しそうに見ているのです」


仕方ないだろ? 聖剣だぞ? 剣士の俺にとって憧れになるに決まってるだろ?


「あの、ご主人様__」


「何? ルナ?」


ルナまで俺のこと虐める気?


「僕、思うのですけど、ご主人様には専用の剣がありますけど、別の剣で大丈夫なのですか?」


「あ!?」


そうだ。俺の武術言語は謎の宙に浮かぶ文字の発する者により授けられた。


別の剣で武術言語は使えるのだろうか?


拳は使えるけど、俺の剣は空気を読んだ結果得た物だ。


俺は試して見ることにした。


「あの、セオさん?」


「はい、なんでしょうか?」


「なんでもいいので頂ける金属はないですか? ちょっと剣を作りたいので」


「き、金属ですか? それならアダマンタイトとオリハルコンがあります。信者からの寄進で少し」


「アダマンタイトですか? それにオリハルコン__そんな貴重なものは__」


「いえ、差し上げます。御恩に報いるにはそれ位させてください。幸いこの倉庫にあります」


俺はセオさんからアダマンタイトとオリハルコンの塊をもらうと剣を作り始めた。


剣の作り方は勇者いつきの館の書庫で読んだ。


まずは火入だ。


「ノア・ユングリングが問う、彼はなんぞ?」


『我は炎、汝の敵を打ち砕く燃え盛る炎。汝の敵を打ち砕く刃なり』


巻き上がる炎、アダマンタイトとオリハルコンを10000℃の炎が襲う。


たちまち溶ける。


よし、今だ!


俺は溶けたアダマンタイトとオリハルコンを殴った。


ゴンゴンゴンゴン


「はあ?」


「ええ?」


「もう、ノア君は__」


何かアリス達が言ってるけど、俺は夢中でアダマンタイトを殴った、だが。


「__忘れてた」


「ノア君、どうしたの?」


「俺、水の符術が使えなかった」


「えっと、ノア君、水魔法をどうすればいいの? 私がやってあげる」


「た、頼むアリス、10℃位の水でこの剣にかけて」


「うん、わかったよ。ノア君」


アリスがクリエイトウォーターの魔法を使って真っ赤に染まった剣を冷やしてくれる。


俺はアダマンタイトとオリハルコンを殴って鍛造して、少し柔らかいオリハルコンを芯に、外周をより硬いアダマンタイトに変えた。もちろん、焼き入れの措置も忘れない。


「よしできた!」


俺は早速自家製の剣を試してみることにした。


「我が剣は無限なり。我が剣は輝く閃光、我が剣に勝るものなし!」


しかし__。


武術言語は常駐のままだった。


「ノア君、ノア君らしいね」


「全くの無駄骨なのです」


「ぼ、僕、流石に笑いました」


「__はははは」


俺はちょっと悔しかった。俺にはそもそも聖剣を使う意味がなかった。


「あの、皆さん?」


「ん? なんですか? セオさん?」


「突っ込むとこ、そこですか?」


何故かセオさんは俺達のことを生暖かい目で見ていた。


ちょっとむかついたけど、大人の対応でスルーした。


めちゃめちゃ根に持ったのは言うまでもない。


「まあ、ちょうどいいから、この俺の作った剣はシエナにあげるよ。それでシエナとルナに剣術の訓練つけてあげるよ。魔法だけに頼るより強くなれるよ」


「ほ、本当ですか? 僕嬉しいです!」


ルナが尻尾を振って俺に擦り寄ってくる。


だからこいつ猫耳族だよな? ほとんど子犬みたいなんだけど?


「シエナも剣なのですか?」


「ああ、1対1なら魔法使いより剣士の方が上だよ。それに接近戦はやはり剣の方が上」


そう、俺がたどりついた真実。確かに遠距離攻撃できる魔法は一見有利だ。


だが、接近されるとたちまち剣の方が有利になる。


剣術の才能はたいてい敏捷度が遅い。だから魔法使いの方が有利だった。だが、魔法使いが剣も振るったら強い。


そして敏捷度の高い__つまり俺のような剣士には魔法使いはひとたまりもない。


俺達が話していると、セオさんがなぜか申し訳なさそうに俺のところにやって来た。


「あの、これは本当に申し上げにくいのですが__」


「何ですか? セオさん?」


なんだ? こんなに申し訳なさそうに。


「ルナ様が聖剣を抜かれてしまった以上、本当のことを言って、ルナ様に本当の勇者様に__その__なって頂きたいのですが?」


__失礼だな__こいつ。

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