第58話 魔王クロエとの思い出

「お兄ちゃんは忘れたのかな? 10年前の夏に迷子の女の子を助けなかった? その時に寂しい想いをしているその子に家族になってやるって言わなかった?」


俺は混乱するも遠い記憶を思い返していた。


10年前。


まだリリーとも出会えていなかった頃。


俺が一番孤独だった日々。


魔力0なことが6歳の時に判明して俺は家族の中に居場所がなくなった。


孤独で誰も俺に関心を持ってくれない。


だからいたたまれずに王都の屋敷を抜け出して河原で川を何度も見に行った。


そんな時、俺は一人の女の子と出会った。


綺麗な子だなと思った。


その子は迷子になっていた。


送ってあげたらあくる日も河原にいた。


その子と仲良くなるのに時間は対してかからなかった。


彼女も孤独だったからだ。


家に居場所がない。


そんな二人が仲良くなるのは必然だった。


ある日その子がこう言った。


「クロエ、ノアのお嫁さんになる。そうすれば寂しくない」


「うん、俺もクロエとなら結婚したい」


俺は思い出して来た。


俺は10年前にクロエちゃんと結婚の約束をした。


もちろん子供の言ったことだ。


自分が貴族の息子だから自由に結婚できないことは当時知らなかったし、気軽に言ってしまった言葉だ。


だが、それより。


「クロエなのか? あの夏の河原で一緒に毎日過ごした?」


「そうだよお兄ちゃん。酷いよ。クロエのこと忘れてたなんて」


「いや、だって!」


だって、確かにあのクロエだ。


俺が突然辺境領に行くことになってさよならさえ言えないでそのままになった。


でも、あの時クロエは俺と同じ位で6歳位。


あれから10年経っているんだぞ?


当然俺と同じ16歳になっている筈。


なのにクロエは12歳位の小学生を卒業するかどうかの年頃だ。


12歳位と推定したのはクロエの胸が微妙に育ちつつあることから推定した。


そこ、変態と突っ込まない!


「ふふ、クロエはお兄ちゃんのために成長を止めたの」


「成長を止めた? 何で?」


「お兄ちゃんがいなくなってしまってから必死に探したの。そしてら辺境領で過ごしてたの。そこでお兄ちゃんの秘密を知ってしまったの」


「秘密? 俺に秘密なんてないぞ」


俺に秘密なんて、一体何を?


「お兄ちゃんが12の時にこっそりと部屋に忍びこんだの。そしたらベッドの下にこれが」


そう言ってクロエは1冊のエロ本を出して来た。


それは俺がうっかり間違えて買ってしまったエロ小説本だ。


子供の俺が魔法写真のグラビアを買うなんてできないからエロい小説のコーナーで買ってしまった。だが。


「メスガキをわからせる調教日誌……ノア君……」


何故かアリスが俺のことを蔑んだような目で見る。


「ご主人様……ルナがあと5年程若ければ」


「いや、これ間違えて買ったの! 本当はJKモノが良かったの!」


何俺自分の性癖を大声で主張してるんだ?


「でもそれにしてはお兄ちゃんの手垢が」


「そうね。これは何度も読み返してるね。ノア君ってやっぱり」


「ち、違う! 俺はアリスが好きだしルナのことも好きだ! 子供じゃなくて!」


いや、さっきクロエちゃんのおかげで少し目覚めそうになったけど、そこは黙っておこう。


「ノ、ノア君、急に告白しないでよ。照れちゃうよ」


「ご、ご主人様が、ぼ、僕をす、好きっ、て、て、天国にいっちゃう!」


どうもクロエは魔法で身体の成長を止めていて、ほんとは16歳みたいだ。


「お兄ちゃん。だから合法的にメスガキをわからせることができるの」


ゴクリ。


思わず生唾を飲み込んでしまう。


「くっ、このままではわたくしは負けてしまうのです。ノア様にそんな特殊性癖があったなんて! あの夏のお嫁さんになるって約束はどうしてくれるのです?」


「あら、暁の勇者さん、先に結婚の約束をしたのはクロエの方が先なの。だからノアはクロエのモノなの」


「くっ!?」


いや、だからみんな俺は別にメスガキ愛好者じゃなくてあれは間違いだと説明してるのに何で誰もそれを信じてくれないの。


そんな時アリスが宣言した。


「わかりました。シエナさんもクロエちゃんもノア君の愛妾に加えることを許します」


「「「ええええええっ!!」」」


驚いたのは俺とシエナとクロエちゃんだった。


何でアリスが決めんの?

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