第57話 勇者と魔王と吸血姫とペットと
「キャ〜!! た、助けてー! ヤンデレとメスガキに襲われるー!」
俺は敏捷度を利用して器用に二人のヤバい女の子から逃げた。
勇者のシエナを選べばいいだけのような気がするが、俺は純情派なんだ。
こんな形で初めてを体験してしまうのは嫌だ。
ていうか、これ強姦だよね?
魔王のクロエちゃんを選ぶとかは絶対ない。
何か大切なモノを失ってしまうような気がした。
クロエちゃんにすごく興奮した事は秘密な。
「どうしたの? ノア君?」
「そうです。どうしたのですか? ご主人様?」
俺が個室から脱出すると廊下でバッタリとアリスとルナに出会った。
「いや、ヤンデレとメスガキが大変なんだ!」
「ノア君落ち着こうね、意味わかんないよ」
「ご主人様、アリスさんの言う通りです。あと、なんで前をそんなにしてるんですか? 必要なら僕ですぐ処理していいですよ?」
アリスの言う通り俺は少々パニックになっていた。
女の子に強姦されそうになった上、それが勇者と魔王の戦いなんだ。
だけど、ルナ……俺の事下から上に見上げてからそんな事言わないで。
確かに俺の前はもっこりしてるけど、半裸のシエナやメスガキとは言えクロエちゃんに迫られたらこうならない方がおかしいだろう?
男の下半身と本人の理性は別人格なんだ。
それに僕で処理していいって……出来るかー!
俺はあくまでルナを仲間として見ている。
好きでいてくれるのは嬉しいけど、そんな扱いはしたくない。
例え本人がいいと言っても俺が嫌だ。
何よりリリーの事を吹っ切れるまで待って欲しい。
「やっぱりあの受付嬢に何かあったんだね? シエナさんが突然壊れ出して血相変えてこの個室に向かったから何かあったなと思ったんだよ」
「ああ、シエナが10分おきのストーキングでクロエちゃんに俺が強姦されそうになっている事に気がついてくれて助けに来てくれたんだけど、シエナにも襲われそうになって」
「えっと、ノア君、意味わかんないよ。クロエちゃんに強姦されるって? ノア君がクロエちゃんを強姦してたと言われた方が理解出来るよ。それにシエナさんだって男の人を強姦するほどの色魔には見えなかったよ。ノア君の事好きすぎるのはよくわかったけど」
「ご主人様、説明してください! 僕も混乱してます。でも、僕はご主人様がどんな人でも一生飼って頂きます。愛されるペットを目指して頑張ります!」
いや、アリスの言う事はもっともだけど、ルナは俺の事疑ってない?
それに俺はルナをペットじゃなくて仲間として加えたんだ。
いい加減ペット願望捨ててくれないかな?
この子はどうも自己評価が低くて、天性のM気質からこんな事言ってると思う。
「ノア君、事情を説明してくれるかな? シエナちゃんとクロエちゃんの二人も交えて話そうよ」
「そ、そうだな。だけどこの個室はまずい。防音魔法がかかっていて密室なんだ。それにクロエちゃんは魔王だ。俺を力でねじ伏せる程の力なんだ。人が見てないとこだと危険だ」
「「ま、魔王」」
☆☆☆
俺はアリスに頼んでシエナとクロエちゃんを個室から呼び出してもらった。
そしてギルドに併設されているカフェに場所を移した。
「えっと、シエナちゃんが勇者で14の時にお嫁さんになるという約束をしてノア君の貞操というか正妻の座を狙っていることは理解できたし、今の勇者と魔王が想い人を巡って争って落とした方が勝ちっていうルールも理解したけど、クロエちゃんがノア君のこと狙う動機が分からないかな。どこに接点があるの? そもそもノア君のどこがいいの?」
アリス、俺のことのどこがいいって、酷くない?
だけど確かに不思議だ。
勇者と魔王が想い人を巡って争うにしても俺とクロエちゃんには接点がない。
勇者シエナの想い人が俺だとしても、それでクロエちゃんが俺を狙うのは奇妙だ。
略奪は恋愛にはあるんだろうけど、敵の想い人だから落とすってちょっと変だ。
「みんな勘違いなの。クロエとお兄ちゃんは初対面じゃないよ。10年前に会っていて結婚の約束してたんだよ。だからお兄ちゃんはクロエのモノなんだよ」
は?
みんな総意でそう思った。
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