第46話 ノア、盗賊団を殲滅する

「さあ、人の平和を踏み躙っておいて、自分達だけぬくぬくと生きていけると思うなよ」


啖呵をきった俺に向かって下卑た笑いが起こる。


「こいつ馬鹿じゃないのか?」


「マジ馬鹿だぜ! たったの2人でこの人数相手に?」


「しかも、可愛い女まで連れて来ているぜ!」


「こいつ生かしておいて、目の前でヤろうぜ!」


まあ、こいつらの処遇も同じでいいだろう。


「お前、気は確かか? 今なら俺の子分にしてやってもいい。その女を差し出すなら考えてやってもいいぜ」


そう言って1人の男が前に進みでる。


他の盗賊達より装備が豪華だ。


雰囲気や態度からしてこいつが首領か?


こいつはしばらく生かしておくか、色々聞き出さんとな。


「ふんっ!」


俺は拳で空を切る。


音速を超えた拳はソニックブームを作る。


それが首領のいる左半分に向かって突き進む。


当然わんさかいる盗賊達の身体を引き裂き、粉砕しながら目に見えない圧が突き進む。


「へぇ?」


「ちょ!」


「ぬぽ!」


「ぱぎゃ」


俺が右側の奴らに同様の措置を取ろうとすると。


「え?」


「は?」


「へ?」


その場にいる誰もが素っ頓狂な声をあげる。


何なんだ?


意味がわからん。


こんな狭いところに集まってくれたら、ソニックブーム起こせば簡単に殲滅できるだろ?


こいつら頭悪いのか?


「ちょ、ノ、ノア様?」


「うん? なんだルナ?」


ルナが驚いた顔で俺を見ている。


ここは喜ぶところじゃないか?


ルナは続けて俺に質問して来た。


「ノア様、あの、今、何をしたのですか?」


「何って、拳で音の壁を超えただけだ。ソニックブームて言って衝撃破となって人間なんて簡単に粉砕できる。常識だと思うが?」


「いや、拳で普通音の壁、破れません!」


「え? でもちょっと練習したら出来たぞ?」


「「「「「そんな訳あるかあああああ!!!!」」」」」


何故か盗賊達に突っ込まれる。


だが困ったことに右側にいた奴らが首領の後ろの方に隠れる。


困ったな。


できれば一瞬で片付けたかったのに。


仕方がない。


俺は剣を抜いた。


「我が剣は無限なり!」


一節の武術言語を唱える。


「ひ、ひぃ!」


誰かが意味もなく悲鳴をあげる。


本能的なものだろう。


首領はあまりの事に固まっていたが、ようやく我に帰り。


「お、お前ら、何してる! 早くこいつを片付けろ! 殺すんだ!」


「そ、そんな事言ったってぇ!」


ザン


弱音を吐いた男が首領に殺される。


「さっさとこいつを殺せ、こっちはまだ50人はいるんだ。接近すればさっきの技は使えん!」


「「「「「お、おぉぉぉぉぉ!」」」」


首領の声に答えたものの声が小さい。


自信がないのだろう。


そして。


「し、死ねぇぽぽ?」


「ふ、ぽけぇ!」


「へぇぽぽ!」


「きゃぽぽ!」


俺が剣を振るうたびに数人が切り刻まれる。


一撃に見える俺の剣は実際にはキャベツの千切りの要領で切り刻んでいるから、奴らはバラバラだ。


腕が吹き飛び、胴を真っ二つにし、頭を粉砕し、一瞬で四肢を失う者。それはいい方で大半が一瞬で爆散する。俺の剣戟が数千回に及んで切り刻んでいるからだ。


そして時間にして5分。


首領以外の盗賊は全て肉片と血のしみへと変わっていた。


「へ? な? ええ? 何でぇ?」


首領はさっきまで100人はいた仲間が自分1人だけを残して全滅した事を知ると。


「ひ、ひぃぃぃぃ!!」


腰を抜かしたのかへたり込む。


俺は情報を聞き出すためにこいつを生かしておいた。


だから、聞いた。


「さあ、答えろ。すぐ答えたらすぐに殺さないでやる。嘘を言わなかっらすぐに殺さないでやる。質問以外の有力な情報を答えたらすぐに殺さないでやる!」


「……!!」


首領は首を縦に振った。俺と同じ音速の壁を越えることができるんじゃないかと思える位高速だ。


話あいが通じたようだ。


「まずお前らを雇った貴族の名は?」


「ユングリング家でさ」


何!


俺の実家?


「捉えた猫耳族はどこにいる?」


「こ、この奥の部屋におりますでさ。全員無事です。奴隷商に売るそうなので、ほとんどの者が無事でさ」


里の惨状を見るとこいつの無事の基準は甚だ怪しいが。


「売り飛ばそうとした奴隷商の名は?」


「そ、それは俺にもわかりやせん。そんなパイプがないから貴族様に雇われて、でなきゃ直接奴隷商に売り飛ばしてますぜ」


まあ、筋は通っているな。


では。


「ありがとう。助かったよ。必要な情報が全部わかった」


「へ、へへ、満足して頂けましたか? それじゃ俺はこの辺で失礼、ほげぇ!!」


俺は首領の頭を掴んで持ち上げていた。


目線を首領に合わせる。


「言った筈だ。人の平和を踏み躙っておいて、自分だけぬくぬくと生きていけると思うなよとな」


「……あぐ……へぐ……ぱおー!!」


首領は俺がきつく頭を掴んでいるから変な奇声を発する。


「自分がこれまでやって来た事をよく考えろ。考えたら俺がお前を生かして返す訳がないだろう?」


「……!!!!」


首領が俺を非難めいた目で見る。


うん?


俺の言った事に不満があるのか?


「俺は答えたらすぐに殺さないとは言ったが殺さないとは一度も言っていない」


首領は顔色がどんどん悪くなり、俺の指が頭にあり得ない量が食い込んで、頭蓋骨が軋む。


そして。


グシャン


首領の頭は粉砕された。

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