第45話 盗賊団のアジト

俺は猫耳族の戦士ルナをお姫様抱っこするとアシュフォードの街目がけて疾走した。


アリスは風魔法を操って空を飛んで行くがスピードが上手く出せないようだから置いてけぼりにして進む。


「ルナ、アシュフォードの街の近くにダンジョンはあるのか?」


「ひ、一つだけあります。ひぃ!」


ルナは大きな木に激突しそうだったので思わず悲鳴をあげた様だ。


だが、構わず木をへし折って突き進む。


ダンジョンは一つだけか、助かる。


つい、詳しく聞き出す前に怒りのあまり先程の族を殺してしまったが、目的地は幸い一つに絞れた。


そして、アシュフォードの街の近くに到着する。


「ルナ、時間が惜しい、ダンジョンの場所はわかるか?」


「すいません。僕も知らない。知識でしか知らなくて、場所までは、ごめんなさい」


「気にするな。問題ない」


俺は探査のスキルを発動した。


探知は受け身のスキルだが探査はこちらから闘気を送り込んで反響で相手の情報を得る能動的なスキルだ。従って相手にこちらの存在が気がつかれる恐れがある。


だが、時間がないのでやむを得ない。


「あった。ルナ、安心しろ。ダンジョンの位置がわかった。人が200人近くいる。その内族は100人といったところだろう。残りはおそらく君の同族だ」


「100人もみんな生き残ってるんだ。良かった」


「まだ、助け出した訳じゃない、気を引き締めて行くぞ」


「はい」


また顔を赤らめるルナ。熱でもあるのか?


☆☆☆


ダンジョンに着くと入り口には見張りがいた。


この付近は街からかなり離れている。


おそらく魔物が出没しないダンジョンなんだろう。


魔物は討伐すると魔石と引き換えに金になるし、ドロップアイテムで稼げる。


だから冒険者などの稼ぎ場所になる。


だが全てのダンジョンに魔物が出没する訳ではない。


魔物が出現するダンジョンは魔王や魔族が作ったダンジョンと言われている。


実際に魔王であるルシフェル、勇者いつき達が鍛錬の為に作ったものもあるが、大半は邪神が1000年前に作ったものだ。


故に天然のダンジョン、洞窟には魔物は発生しない。


魔物がいないから誰も近づく者がいない。


盗賊団にとってはうってつけの隠れ場所だ。


俺は早速ダンジョンの見張りに挨拶する事にした。


「やあ、ここは盗賊団のアジトという理解でいいのかな?」


「な? お前馬鹿か? たった2人でこんなとこに何をのこのこと?」


「いや、相棒、良く見たら中々のベッピンの猫耳族の女を連れているじゃないか」


「ちげえねえ。鴨がネギ背負って来やがったぜ!」


「この男はさっさと殺して……」


「女は散々犯して殺すか?」


「だな、俺、女殺すのたまらないんだ! 早く殺してぇ!」


はは、こいつらの処分は決まったな。それとここが盗賊団のアジトで間違いない。


ズシャ


「ひぃ」


ルナが思わず悲鳴をあげる。


まあ、無理もないか。


俺は無造作に見張りの2人を殺した。


悪人に人権は認めん。ダンジョンで生死をかけて戦った俺の辿りついた境地。


以前の俺なら悪人でも自身の手にかける事は躊躇っただろう。


だが、最果てのダンジョンで俺は変わった。


こいつらに生きる資格はない。


2人とも俺の斬撃を数千回喰らって一瞬で粉々に爆散した。


「行くぞ、ルナ」


「は、はい、ノア様」


俺達はダンジョンを進んだ。


残念だが魔物が発生するダンジョンと違って壁や床がほのかに光が灯るという事はなかった。天然のダンジョンの困った点だ。


俺は収納カバンから魔道具を一つ取り出した。


懐中電灯といういつきが残した魔道具だ。


これは魔石を魔力源とする道具で、いつきがいた世界の電気というモノで光る物と同じ原理で光る。ちなみに電気はこの世界でも作る事が可能だそうだ。


200m程進むと大きな扉があった。


俺の探知のスキルにはここに来るまでにもいくつもの罠があったが、全部避けて来た。


そして、このドアの向こうには、100人近い人の反応がある。


おそらく盗賊団が待ち構えているのだろう。


罠の中にはセンサーの役割をはたしている物もあった。当然侵入はバレている。


「ノ、ノア様?」


「安心しろ。ルナ」


俺はルナの頭に手をやると、やはりルナは顔を赤くする。


こいつ風邪ひいてんのか?


終わったら、病院に連れて行こう。


そう思いながら、俺は無造作にドアを開けた。


するとやはり待ち構えていた盗賊が魔法をかましてくる。


俺はそれを手で振り払った。


防御30000以上ある俺にとって低ランクの攻撃魔法は火の粉を払うのと同じだ。


「え? そ、そんな事なんでできるの?」


「な、何で? 何なのそれ? どうやっったらそんな事できるの?」


不満の多い奴らだな。


もちろん剣も使わず黙って殴る。


「へ? へぐっ?」


「あ? あべっ?」


2人の盗賊は俺に殴り飛ばされて壁に激突する。


音速で激突した2人は木っ端微塵に爆散する。


肉片すら残らない。赤いしみだけが壁に残る。


「さあ、人の平和を踏み躙っておいて、自分達だけぬくぬくと生きていけると思うなよ」


俺は盗賊団100人に対して啖呵をきった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る