第35話 アリスに不本意なお願いをする

俺はアリスのご機嫌を取るのに必死だったけど、なんとかご機嫌を回復してもらった。


だが、俺達は困っていた。


出口が見つからないのだ。


ここは安息の間を勇者いつきが改良した空間なんだろう。


ダンジョンを作ったのもいつきだろう。


「ねえ、アリス何か勇者いつきから聞いてないの?」


「それよりロリババアって酷いよね。ノア君?」


「いや、だって、アリスが封印されたのって勇者譚のあった頃だから1000年い、へぐっ」


アリスにいきなり殴られた。


アリスは涙目になっていた。


いや、女性に年齢のこと言うのまずった。


「私ね。私、16の時に吸血姫になってそのまま封印されたから実質16歳なんだよ」


「わかったよ。アリスは16歳だよ。わかったから許して」


「じゃあ、ぎゅっとして?」


「わかったよ」


アリスの柔らかい身体を抱きしめて、なんか俺何やってんの? という気分になる。


だが、それより出口だ。


アリスから何か有力な情報が手に入ったら。


「ねえ、アリス。ここダンジョンの最下層だろ? ここから出る方法を勇者いつきから何か聞いてないの?」


「う〜ん。無いけどこの屋敷の中を探すしかないと思うよ。いつきはノア君と違って意地悪じゃ無いからね」


そのいつきにメンドイから封印されたんだろうとはもちろん黙っていたが、俺は何故か過去の勇者いつきに嫉妬を感じた。


「アリスといつきって、その、付き合ってたとか?」


「ち、違うよノア君。私といつきはそんなじゃないよ。それに……私経験もないよ」


何をいきなりカミングアウトしているのかとつっこむ前に何故か安堵している自分に驚いた。


俺、アリスの色香にかなりやられているな。


いかん、いかん。


俺はリリーの復讐を果たすまでは恋はしない。


とは言うものの、俺の奥底にあったあのドロドロとした復讐への怨念はかなり鳴りを潜めていた。


アリスのおかげだろう。


復讐はしたいが復讐のためだけに生きる人間にはなりたくない。


そんなことはリリーも望まないだろう。


あの子はそんな子だった。


「……」


「どうしたの? ノア君?」


「いや、なんでもないよ」


俺はリリーのことを過去形で考えたことに自分でショックを受けた。


俺は気持ちを切り替えてこのダンジョンを脱出する手がかりを探そうと思った。


「この屋敷中を探そう。アリスの言う通り、ヒントがあるとしたらこの屋敷の中だな」


「うん♪」


俺とリリーは屋敷を探し回った。


すると鍵がかかっている部屋が二つ見つかった。


「鍵はかかっているけど魔法とかの鍵とか封印とかは無いのか?」


「無いみたいだよ。ただの普通の鍵だよ」


「そっか、じゃドアの鍵をネジ切ろうか?」


「ノア君、脳筋になってるよ。これ位の鍵なら多分私でも開けられるよ」


アリスに脳筋扱いされた、ぐすん。


ポンコツに脳筋扱いされると言う屈辱に耐えて俺はアリスにお願いした。


アリスの器用さは並の盗賊やレンジャーの能力者を超える。


「アリス、不本意だが頼む」


「それが人に何かを頼む態度なのかな?」


「アリス様よろしくお願いします」


俺は更に不本意ながらアリスお願いした。


アリスは何処から出したのか金属のピンを持って鍵穴をカチャカチャと。


すると。


カチャリ


以外にもあっさりと扉は開いた。

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