第31話 俺は空気が読める1
アリスを真っ二つにしてしばらくアリスは戦闘不能だ。
流石に今の状態では魔力を操ることはできないだろう。
今のアリスは蘇生に魔力が自然に全部流れている。
吸血鬼の不死性はその魔力が根源だ。
魔力が枯渇している時に殺られれば死んでしまう。
今のアリスはMPがほぼ満タンだから死ぬことはない。
だが、今のアリスは以前より強くなっている。
おそらく10分もすれば完全復活する。
その前に決着をつけないと。
「ノア・ユングリングが問う、彼はなんぞ?」
『我は炎、汝の敵を打ち砕く燃え盛る炎。汝の敵を打ち砕く刃なり』
俺は目眩しに火の巫術を打ち込み、ドラゴンのすぐ近く。その巨大な顎に近づいた。
危険とは知りつつ、口の中に巫術を打ち込むためだ。
探知の魔法を持っていないと信じたい。
だが。
「グア!?」
俺の身体を顎ではなく、石で出来た剣が俺の身体を引き裂いた。
土の上位魔法か?
俺には探知のスキルで魔力の流れはわかる。
だが、このドラゴンに魔力が渦巻いたのはほんの一瞬。
「アリスとおんなじで、詠唱破棄で魔法かませるとかどんなけチートなんだよ!」
俺の目は虚ろで見えにくくなっているし、身体はフラフラとし始めている。もう、限界だ。体力的にも、HP的にも、精神的にも……何もかもが俺の限界を示していた。
しかし、その時。
宙に文字が浮かんだ。
『力が欲しいか?』
欲しい。
力が欲しい。
勝てなければ復讐ができない。
いや、それよりもこのままではアリスが死んでしまう。
アリスも永遠に不死ではいられないんだ。
「欲しい! 力が欲しい!」
すると宙に更に文字が浮かんだ。
『汝に問う。汝は何故力を欲する?』
「俺は……俺はアリスを守りたい!」
俺は咄嗟に答えた。
俺の本音。
復讐の前に仲間を守りたい。
理不尽にリリーを殺された俺。
もし、俺に力があったら?
アリスの存在が俺にそう思わせた。
『では我に問うがいい。空気を読め』
「分かった」
俺は最後の力を振り絞ってドラゴンの土魔法の攻撃を避けながら空気を読んだ。
「ノア・ユングリングが問う、彼はなんぞ?」
『我は……我は人を救うものなり……人を仇なすものではない……我は人を救う牙なり』
俺の身体に信じられない闘気が流れ込むのがわかる。
その闘気の奔流は凄まじく、俺の筋肉の筋や血管がちぎれる。
「おおおおおおおおおおお!!」
思わず叫ぶ。
『読むがいい。空気を。汝は最強。心正しい最強の戦士だ』
俺は宙に現れる武術言語を読んだ。
「我に恐怖なし。我に勇気あり。我剣は人を救う守護の剣なり。人を救う我剣に敵うものなし!」
いつもと違う武術言語。
そしてそれは4節。
俺の闘気が更に膨れ上がる。
「阿修羅剣!」
続け様に武技を放つ。
そして、剣戟をエンシャントドラゴンに放ちまくる。
俺の武技はドラゴンにかなりのダメージを与えた。
そして、今の俺の剣はドラゴンの鱗を粉砕する。
ボロボロなドラゴン。
自然治癒が始まっているが、そんなものが間に合わないスピードでダメージを与えて行く。
質的にも量的にも反撃も治癒も許さない。
「阿修羅剣!」
すっかりHPを削られたドラゴンに最後の止めを刺す。
「グェアアアアア!!」
エンシャントドラゴンの断末魔の叫びがこだまする。
俺のスキルがドラゴンの生命が消えたことを探知した。
「流石にもう、これ以上戦えない」
最後の武技を叩き込んだところで俺のHPは限りなく0になった。
謎の呼びかけに答えた俺に溢れた闘気は俺自身を傷つけていた。
あちこちの筋肉の繊維がちぎれ、筋が切れ、血管がちぎれていた。
そして俺の意識は途切れた。
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