俺は空気が読める~魔力0の無能だと馬鹿にされてダンジョンに追放された俺、実は災害級のスキルがぶっ壊れていて世界最強にして唯一の剣士になる。あれ? 気がついたら実家が没落していた~
第3話 ノア、最果てのダンジョンに追放になる
第3話 ノア、最果てのダンジョンに追放になる
「判決を言い渡す。主文。ノア・ユングリングを最果てのダンジョンへの転移による追放刑と処す」
「冤罪だ! 俺がリリーを殺すわけがない! リリーを殺したのは兄貴達だ!」
俺がいくら冤罪を叫ぼうとも裁判長は全く意に返さず、まるで決定事項であるがごとく俺への裁判を進め、俺への判決を決定した。
わかってはいた。全部父の差金だろう。
いくら貴族とはいえ、使用人を殺してしまったのでは罪に問われる。
あの日、リリーが乱暴された時、俺はルイ兄貴に何度も殴られて気を失った。
そしてあくる日、目が覚めると俺は縄で縛り付けられていた。
リリーはテオ兄貴とルイ兄貴に殴る蹴るされて顔は腫れて死んでいた。
二人に怨嗟の声を上げたのだろう。
ルイ兄貴は口に怪我をしてた。
多分、ルイ兄貴の唇を噛み切ったのだろう。
それで、散々暴力を振るわれて、歯止めが効かなくなって殺された。
そしてその犯人は俺だと言うのだ。
悔しかった。
好きな女の子を守れなかった。
それどころか乱暴された上、命まで奪われた。
自分の弱さがこれ程憎いと思ったことはない。
それなのに、俺はリリー殺害の罪によって裁かれる。
俺の罪はリリーへの強姦及び殺人。
全て兄達がやったことだ。
将来が約束された兄達。
家にとって役立たずの俺。
父がどう考えるのかは察しがついた。
だけど、それでも俺は裁判で無実を主張し続けた。
だが、何一つ聞く耳を持ってもらえなかったのだ。
裁判自体がデキレースの茶番なんだろう。
「おら、手間かけさせるんじゃねえ」
牢屋の番人に今日も粗末な牢に押し込められる。
だが、ここも今日までだ。
「さあ、刑の執行の時間だ」
牢屋に入れられたと思ったら、ものの10分もたたず牢屋から出される。
チキショウ! チキショウ! チキショウ!
俺は心の中で何度も怨嗟の声を上げた。
女神様? あなたは本当に存在するのですか?
何故こんなことが許されるのですか?
リリーの顔が頭に浮かぶと涙が頬を伝った。
俺は最果てのダンジョンへの転移の魔法陣による追放刑を受けた。
最果てのダンジョン。
魔族の住む魔の地との境目に存在するこの国最大のダンジョンの一つ。
誰一人制覇したものはいない。
転移陣はいきなりダンジョンの奥地に飛ばす。
装備も何もない。
能力もない俺がダンジョンに転移されることは事実上の死刑だ。
いや、この刑を受けて生きて帰った者は誰一人いない。
憎い。リリーを穢した兄貴達が憎い、リリーを殺した兄貴達が憎い。
事実を知りながら、俺に全て罪を被せた父が憎い。
そして、それに何もなす術がなかった自分が憎い。
俺が強ければリリーは穢されることも殺されることもなかった。
だが、無情にも俺の刑は執行される。
こんなに早く判決が出て、刑が執行されるのは父の圧力だろう。
憎い。兄達が憎い、父が憎い。
だが、俺には何もなす術がない。
それが一番悔しかった。
「さあ、この魔法陣に入るんだ」
執行官に促されて俺は転移の魔法陣に入った。
そして、それはあっさりと刑は執行された。
気がつくと、俺は輝く廊下のようなダンジョンの中にいた。
そして。
「……う、く」
いきなりダンジョンに飛ばされた。
最初の魔物にあった時が俺の命日なんだろうな。
それは1時間後か、10分後か。
それ位の差でしかない。
そして俺の背後で音がした。
そこにいたのは予想した通り、狼の姿をした凶悪な魔物だった。
「ガルルルルル……」
牙の生えた口から涎を垂らしながら、俺を舐めるように見ている。
魔物に会うことは確定事項だ。だが、これ程早いとはな。
「……せめてあがいてやる」
思わず身構える。
ダンジョンとはいえ、入口近くの上層階には大した魔物は出ない。
だが、俺が転移されたのはいきなり最深部。
魔物、ホワイトウルフに遭遇してしまった。
真白な美しい狼だ。そして、口には見事な牙。
かなりのピンチだ。俺は辺境の領でも魔物討伐なんてしたことがない。
そもそも対抗できる魔法がない。
こんな凶暴な魔物の前では、俺など役にたたず。餌になるだけなのは明かだった。
とは言え、おとなしく餌になる気はない。
だがその時、突然俺の目の前の空気に文字が現れた。
『力が欲しいか?』
空気にそう書いてあった。
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