第56話 御対面?(18)

 と、思うのだよ。彼女自身も梁に対して、『何故?』そんなことを……。




 そう、梁に対して苦手意識を持ち、募らせるのか迄はわからないのだが。覇王項羽は無意識に思ってしまうのだよ。


 だから梁に勇んで荒々しく。「さぁ~! さぁ~! さぁ~! 早くいいなさいよ~!」と、『さぁ~!』を三回も口に出されても、拍の時のようには、言い返すことができない。


 だから覇王項羽はたじろぐしか手がないので、「いや、いや、それは……」と、言葉の口調を『しどろもどろしながら』パソコンのモニター画面内へと。梁の荒々しい勢いに押されながら後退を始める。


 そんな二人の様子……。




 そう、覇王項羽と、自身の姉である梁のやり取りを凝視して拍は、『ホッ』と、自身の胸を撫で下ろすのだよ。姉の梁の怒りと不満が、自分自身から物の怪の女性……。覇王項羽へと移り変わったことが、拍の瞳にも確信ができたから安堵するのだ。


 だから伯は、梁と覇王項羽の争いの隙をついて、自身の宝物を独り占め──。独占しながら愛情を一杯注ぐのだ『あなた~』『おまえ~』と、言った様子でね。


 でもさ? 梁は、自身の背の後ろで、そんな仲慎ましい様子が繰り広げられているとは知らないので。


「さぁ~、あなた~。早く~。言いなさいよ~。私が誰で何者なのかを。早く言いなさい! 貴女~!」と。


 相変わらず勇んだ様子で覇王項羽へと迫っている状態なのだ。


 でッ、彼女と対峙している覇王項羽はと言うと?



 もう完全に蛇に睨まれて蛙状態……。




 そう、籍の母である梁の瞳を睨み返すこともできずに、俯いた状態……。




 まるで、幼子が母親に叱られているような状態だから。


「いや、あの、お前と言うか? 貴女のことが誰なのか。儂も解らない……」と。


 相変わらず小さな声色で、『ボソボソ』と、梁へと回答をしているのみなので、覇王項羽自身も苦手意識がある梁へとどう答えてよいかわからない状態なのだ。


 と、なれば?



 覇王項羽が泣きつく場所も只一つ……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る