第53話 御対面?(15)

 サッと後方を向き──。自身の姉である梁へと己の持つ麗しい背を魅せながら。その場に座り込み──。伯の大事な宝物へと抱きつき甘えながら。


「籍~。籍~。姉さんが~。お姉ちゃんを苛めるのよ~。今直ぐ~。この

 家から出ていけと~。情け容赦も慈悲もない~。恐ろしい台詞をお姉ちゃんへと荒々しく言ってくるのよ~。籍~。籍~。あ・な・た~。何とかしてよ。お願いだから~」


 まあ、拍はね。こんな感じだよ。本当に彼女は、涙が出ているのか、出ていないのか、迄は、籍の胸に顔を埋めているので、よくはからないけれど。自身の宝物でもあり。主さまへでもある籍へと甘えながら女を武器にして泣きつき始めだしたのだ。


 己の実姉であり、籍の実母でもある梁が、自分へと慈悲と労いの言葉をくれず、恐ろしい言葉ばかりを告げ──。姑の如く振る舞いで怒声、罵声を浴びせてくるから。梁を叱ってくれと嘆願をするのだ。


 それを聞き籍自身も、「姉さん……」と、拍を労うように優しく声をかけるのだ。


 それも、彼女の頭を優しく撫でながら声をかける。


「もう~。何~。貴女~?」


 そんな様子……。




 そう、梁自身を悪者にしながら、籍へと甘える様子を凝視すれば。梁自身も不満が募る。


 だから梁は伯へと不満を漏らす。でも? 梁自身もこれだけでは、己の不満が解消できないので、更に自身の口を開けて不満を告げる。


「貴様~。また~。何をしているのだ~? その男~。籍は~。貴様の物ではない~。籍の半身である儂の物だぁあああ~。この~。大馬鹿者がぁあああ~!」とね。


 梁殿が拍へと不満を告げるのではなくて。彼女よりも先に覇王項羽が拍へと不満を怒号として放ったのだ。


 だから、「「えっ?」」と、驚嘆を漏らしながら後ろを振り向く梁……だけではなくて。


 覇王項羽に不満を告げられて拍の方も姉妹揃って仲良く、覇王項羽のことを凝視しながら嘆息を漏らしたのだ。


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