ライヒシュタット公とゾフィー大公妃

せりもも

1832年夏


 1832年、夏。

 フランツが亡くなった。


 ライヒシュタット公、フランツ。ナポレオンと、オーストリア皇女マリー・ルイーゼの間に生まれた彼は、華やかなその生誕とは裏腹に、孤独な人生を歩み、早すぎる死を迎えた。

 21歳。死因は結核とされている。







 フランツ・カール(ライヒシュタット公の叔父。母マリー・ルイーゼの弟)が泣き止まない。

 おはよう、と言っては泣き、おやすみ、と言っては泣く。

 彼は、本当に、がっくりきていた。



「知ってるか、ゾフィー。初めて会った時、あいつが、何と言ったか」


 ぐすぐすと鼻をすすりながら、F・カールは、昔の話を始めた。

 思い出の中に、逃げ込もうとしているのだ。


義母はは(マリア・ルドヴィカ。皇帝の3人めの妻)に連れられ、僕は、シェーンブルンの庭園を訪れた……」








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