最果ての図書館と知恵授けの吸血姫
御上 零
エピソード01 賢王の苦難
第1話
私は今、人気のない場所にいた。辺りは雪で白く染まり、動物の気配すらない。
そんな未開の地でただただ歩みを進めている。
「王よ、本当にこの先にそんなものがあるのですか!?」
我が臣下が私に問う。実際辺りにあるのは枯れた木々のみ。
「分からぬ。しかし、望みを捨ててはいけない」
そうして私は歩みを進める。私がこのような未知なる地を訪れているのには理由がある。我が国のとある問題を解決するために、この地に存在するという【図書館】を探しているのだ。
度々私を心配して、臣下達が声をかける。
「そろそろ戻りましょう、アルベルト王よ。この地に来てから既に数時間と経っております。このままでは身体が持ちませぬ」
彼らの言うことも理解できる。対策を行っているとはいえ、この地は世界の北端。極寒の風は我々の体力を削り続けている。
「ここまでか…」
そう諦めかけた私は…ふと、謎の感覚を覚えた。
そして…気がつくと私は一人だった。周りに臣下達はいない。
目の前にはひとつの扉がある。
「今のは…結界か?」
魔法による結界は我が国にも存在する。今の感覚はそこを超えた時のものに近い。
このような人気のない地に魔法の中でも高度な技術に分類される結界が存在する。それは何よりも異様なことだった。
「ならば、この先に例の場所が…?」
私は恐る恐る扉を開け、その先に進む。
扉の奥は先程までの白い光景とは異なり、薄暗い空間だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます