最果ての図書館と知恵授けの吸血姫

御上 零

エピソード01 賢王の苦難

第1話

私は今、人気のない場所にいた。辺りは雪で白く染まり、動物の気配すらない。

そんな未開の地でただただ歩みを進めている。



「王よ、本当にこの先にそんなものがあるのですか!?」



我が臣下が私に問う。実際辺りにあるのは枯れた木々のみ。


「分からぬ。しかし、望みを捨ててはいけない」


そうして私は歩みを進める。私がこのような未知なる地を訪れているのには理由がある。我が国のとある問題を解決するために、この地に存在するという【図書館】を探しているのだ。


度々私を心配して、臣下達が声をかける。


「そろそろ戻りましょう、アルベルト王よ。この地に来てから既に数時間と経っております。このままでは身体が持ちませぬ」



彼らの言うことも理解できる。対策を行っているとはいえ、この地は世界の北端。極寒の風は我々の体力を削り続けている。


「ここまでか…」


そう諦めかけた私は…ふと、謎の感覚を覚えた。

そして…気がつくと私は一人だった。周りに臣下達はいない。



目の前にはひとつのがある。



「今のは…結界か?」


魔法による結界は我が国にも存在する。今の感覚はそこを超えた時のものに近い。


このような人気のない地に魔法の中でも高度な技術に分類される結界が存在する。それは何よりも異様なことだった。



「ならば、この先に例の場所が…?」



私は恐る恐る扉を開け、その先に進む。


扉の奥は先程までの白い光景とは異なり、薄暗い空間だった。

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