「Verbindung」

@naratsuki_10

序章

「──このまま、そうしているつもりか?」


 それは小さな子供を心配するようにも、何をしていると叱りつけるようにも聴こえる、そんな声色をしていた。言われずとも分かっている。自身の腕に抱えているものが、もう戻らないということを。

 けれど、と顔を上げた先で、希望が示されていたから。今度こそ、今度こそは護り抜いてみせると、立ち上がることを決めたのだ。




 魔法──それは神族と魔族、二つの種族のみが持つ創造の力であった。天界に生きる神族は守護を、魔界に生きる魔族は破壊を得意とし、其々の世界の魔力はその性質上、相容れぬものであった。しかし、二つの領域の間で生きるヒトという種族に、この二種類の魔力を合わせ持ち、操る存在が生まれたのだ。彼等は、「魔導師」と呼ばれた。


 遥か昔、世界には多くの魔導師が存在していた。人ならざる魔力を体内に持つことで、長い寿命と高い再生能力を誇る彼らは、世界各地の様々な抗争を制止するべく動き、尊敬と恐れを抱かれつつも魔力を持たない者達と共に暮らしていた。

 そんなある日ある国で、彼らの無から有を生み出す力を恐れた王が、魔導師狩りの命を民へと下した。捕らえた者には莫大な報酬が、捕らえられた者には仲間の存在を吐かせるため、死よりも辛い拷問が与えられたのである。


 しかし、長き時の果てに、それを見兼ねた神が一人。神は生き残った魔導師の中で最も力が強く、そしてその力に傲ることのない精神を持つ者に、一つの願いを託した。神は大地の一部を魔法で隔離すると、そこに行き場を失った全ての魔導師のための村を作らせた。村には助けを求める魔導師が自然と導かれるように魔法がかけられ、長となった始まりの魔導士は、村から少し離れた場所に館を建て、そこで暮らし始めた。

 やがて村には魔導師が集まり、彼らや彼らの子供達は、魔導師狩りの難を逃れ平穏な暮らしを手に入れた。


 そして──数百年の時が経った。




End

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