告白
「じゃーん! 可愛くない? 可愛いよね?? 襲いたい」
「襲わないでください」
入室と同時にアサラはノダテに叩かれた。そしてかりんは微笑んだ。
「シュウの意見は?」
「……良いと、思う」
シュウイチは素直に良いと思った。言葉に詰まったのは微笑むかりんに見惚れたからだ。
「あいつ見た目だけでしか判断できなかったんだな。素材は良いんだからそれに見合うようにしてあげれば……」
「アサラさん。それ以上は。かりんちゃんの理解度が上がっていますから」
「あたし」
「わたしです。かりんちゃん」
「わたし、えっと。ご主人さまと一緒に居ていいでしょうか」
「ご主人さまはやめてくれ。俺の名前はシュウイチだ。かりん」
「しゅういち様」
シュウイチは首を振った。
「さん」
「しゅういちさ、さん」
「ノダテつあん、なんだろうなこの空間」
「甘いですね……」
見つめあうシュウイチとかりんを見てアサラとノダテも顔を見合わせた。
無言の帰宅道中でシュウイチはもやもやとした気持ちで満たされていた。
こんな気持ちはアサラ以来だった。
シュウイチは自宅の扉を開けるなりかりんを抱きしめ唇を重ねた。離す時に唇をぺろりと舐める。
「にんにく、オリーブオイル。ペペロンチーノを食べたかな?」
「なんでわかるんですか! 歯を磨いたのに! 牛乳も飲んだのに!」
「俺もお前と同じなんだよ。救われた人間、なんだ」
シュウイチはかりんの頭を撫でた。
「アサラにもアルテにもテラスにもノダテにも勿論かりん、お前にも」
「わたし、なんにも」
「俺はな、かりん。人間とは言えないんだ。人間だけど動物の血が濃く出ている」
しかもかなり強く。とシュウイチは息を吐いた。
「俺の種族はオオカミ。気位が高くてな。なかなか友が出来なかったんだ。そんな所で出会ったのがアサラだ。何と言うかあいつって欲望の塊だろ? ずるずると付き合う様になってさ。多分その時から保護活動はしていたんだろうな。俺の中のオオカミをあいつは見ていたんだと思う。距離が近くなって、解ったんだよ。俺の中のオオカミを見ていただけだって。そう気が付いたんだ。俺はあいつを見ていたのにあいつは俺の中のオオカミしか見てなかったんだ」
シュウイチは乾いた笑い声を出した。
「笑えるだろ? でも好きなのは好きなんだぜ? だから友人関係だけは続けていたんだ。でも、どんどんと増えるあいつの娘たちに嫉妬していた。あいつの中ではみんな1番だったと思う。だけど、俺はその中でも1番になりたかった。でも俺はあいつと一緒になる事は出来ないしその資格も無い。あいつの身体に一生残る傷をつけたのは絶望だったし。そこで、出会ったのはお前だ。かりん」
「わ、たし?」
「最初はただの保護者として親としてお前を見ていたと思う。だけどお前が一足飛びに成長する姿を見て胸に溜まる物があった。俺は家族から距離をとって生きていた。距離が近かったのはアサラくらいだった。だからお前の事を初めて出来た家族だと思った」
だけど違ったとシュウイチはかりんの瞳を覗いた。
「お前を拾った時から俺はお前を1個の生き物として好きになっていたんだ。一目惚れだ。着替えてきた姿を見て俺は堕ちた。好きだ。愛している。かりん」
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