第4話 ラブレター

「高野くん、これラブレターです!心をこめて書いてきたので読んでください!」


 ある日の放課後、いつものように春にぃのことをストーカー……もとい、ボディガードとして見守っていると、春にぃが告白されているのを見てしまった。

 相手は、背も高く胸も大きく、髪も綺麗で、モテてそうな女の人。どこかで見たことがある気がしたけれど、そんなことはこの際どうでもいい。

 この学校は中高一貫だから、春にぃがモテていることは知っていたけど、こんなにも綺麗な人から告白されているのは見たことがない。確かに春にぃはかっこいいけど、人のものに手を出すなんて絶対性悪女よ!

 その後、慌てて家に帰り、春にぃが入浴するまで待っていた。


「優香、先に風呂入るか?」

「んん!い、いや、私は後でいいよ!」

「そっか。なるべく早く出て来てやるから、待っててくれ」


 ふふふ、とうとうチャンスが来た。私は春にぃの部屋に忍び込み、春にぃの匂いをいっぱい吸い込んでからラブレター探しを始めた。というか、机の上にスマホとともに堂々と置かれていた。


「まったく…春にぃったら、警戒心が無いんだよね…。そんなところも好きなんだけど。浮気なんてしたらすぐに懲らしめてやるんだから」


 早速ラブレターを手にとってみると、裏には九条夕月と相手の名前が書かれていた。


——あ、いいこと思いついた。


 春にぃのスマホをとり、パスワードであろう1206と打つと、簡単にロックが解除できた。

 自分の誕生日をパスワードにするところも相変わらず警戒心が薄い。連絡先の交換は既にしているはずだから、私は電話帳のアプリを開いて、九条夕月という名前を探した。上から2回ほど下へスライドしただけで簡単に見つかり、私は迷うことなく電話をかけた。


「もしもし。高野くん、どうしたの?もしかして返事をくれるのかな…?」

「私、春に……春斗の彼女なんだけど」

「えっと、高野くんって今は彼女はいないって言ってなかったっけ?」

「実は隠していただけで、本当はいたのよ」

「そうだったんですか…ちなみにどれくらいのお付き合いなんですか?」

「えっと……8年よ!」

「八年ですか。まるで泥棒猫の義理の妹さんみたいな期間ですね」


 マズっ!気づかれた!?

——いや、流石にそんなことはないはずよ。


「私たちは兄妹以上に深い絆で繋がれているのよ。だから、春斗のことは諦めなさい。もともと彼は貧乳好きなの。あなたのようなムダ肉巨乳女はただの害虫なのよ!」

「そんな…っ!害虫だなんて酷いわ!まさか、高野くんの妹さん私に対してがそんなこと言うだなんて……」

「ふぇっ!?い、妹?なんの話かしら?」

「ふふっ、優香ちゃんでしょ?何回か会ったことがあるはずよ」


 あぁ…、だからどこかで見たことがある気がしたのかな…。えぇい、もう開き直ってやるしかないわね!


「……そうよ、妹の優香よ」

「それじゃあ優香ちゃん。一つ忠告よ。背後うしろに気をつけたほうがいいよ」

背後うしろ……?」


 クルッと振り返ってみると、そこには鬼の形相をした春にぃが立っていた。


「えっと……。春にぃ、怒ってる?」

「当たり前だろ!」

「でも、なんで背後うしろに春にぃがいるって分かったの?」

「電話をしながら高野くんとメールをしていたからよ。彼がスマホを二台もっているのは流石の妹さんでも知らなかったかしら?」

「優香、お前なんでこんなことしてるんだよ」

「だって、春にぃが告白されてるの見たから…」

「あぁ、あれか……」

「それで、付き合うの……?」

「あぁー、ど、どうだろうな……」


 そうやって誤魔化してくる春にぃを見て、身体中から力が抜けた。


「そうだよねー。春にぃは巨乳好きなんだもんねー。ははは、はは、は……」

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