第5話
僕達と怪盗ピンクルビーの対峙、そこへ静かに現れたその人は…シャノワールさんだった。
「久しぶりね、シャイリス……。」
「姉さん……」
二人はお互いを見つめている。その様子を僕達は見守る。ピリピリした雰囲気とは違うそれでいて和んだ雰囲気でもない空気に僕達はただ見守る事しかできないでいたんだ。
「シャイリス…貴女、どうして怪盗なんて馬鹿な事を繰り返しているの…?」
「私の事なんて何も知らないで余計なことを言わないでよ。」
「貴女はこうして私の所に犯行予告も出してきてここに来たと言うことは…私と話をしてくれる為に来たのでしょ?」
するとシャイリスさんは笑いだし言ったんだ。
「フフッ、アハハハ!違うわ!私はここに倭国の秘宝『光の勾玉』を奪いにきただけよ!だから貴方達全員おとなしくしてなさい!」
彼女の身体は黒い光に包まれていく…。
「待ちなさい!!」
シャノワールさんの止める声も空しく魔法は放たれる。
「闇魔法『ブラックローズ!!』」
シャイリスさんの影が勢いよく伸び僕達の身体にまるでイバラの様に絡み付き拘束する。シャイリスさんの影の薔薇に巻きつかれた僕達、僕はかろうじて顔は隠れなかったけどらいとは全身を覆われてしまっている…。
「らいと君!?」
シャノワールさんはらいとを救うべく薔薇を外そうとすると魔法の薔薇のトゲにその手は貫かれる。
「いっ……!?」
彼女の手からポタリポタリと血が滴り落ち床を染めていく。
「動かないで!!動かなければ無傷でいれるわ…。」
シャイリスさんの声が響く。
「私は光の勾玉が欲しかっただけよ!だから宝を手にしたら消えるわ…。」
そう言うシャイリスさんの横顔は寂しそうに僕には見えたんだ。
「シャイリスさん!!僕には貴女が寂しそうに見えるよ…微妙な震えと僅かに唇を噛み締める仕草はきっと寂しいからだよ…。」
「そんな事はないわ!何も知らない君に私の何が分かるって言うの!?」
シャイリスさんはそう強く言ったんだ。
「僕には分かるよ。僕がそうだったから…。」
僕は元々、今のように元気ではなかった。人の顔色を伺い、人に気を遣い、誰にも怒られないように生きてきたおかげで人の顔を見ると表情から人の心がなんとなくだけど分かるようになったんだ。
「シャイリスさん、本当はシャノワールさんと仲直りしてもう一度昔のようになりたいんじゃないの?」
僕の発言にシャイリスさんは声をあらげる。
「そんなわけないでしょ!?」
そしてシャイリスさんは話を続ける…。
「私は、あの日、母から告げられたの…。もうパパとお姉ちゃんは今日から家族じゃないって!元々父はお姉ちゃんだけいれば良いって人だったしお姉ちゃんはイイコの模範だった。」
シャイリスさんの目から涙が溢れた。
「私は!!母に連れられ家を出て…母は知らないうちに男をつくり私を捨てた。一人になった私は孤児院に拾われ育った。孤児院で暮らしていたある時、TVで雅家という財閥の父と貴女の幸せそうな顔をみたわ。」
シャイリスさんの身体が震える。
「私があんな思いをしてる時に幸せそうな顔してるあんた達の顔をみて私は復讐を誓ったわ。」
シャイリスさんはそう言うとシャノワールさんを指差し強く言ったんだ。
「父は愚かな自分の傲りで破滅した事は知ってる。でも父の力を使ってこの街でこんな良い暮らしをしてるあんたのところに雅家の宝がある情報を手に入れたわ!だからあんたを追って私は世界のあらゆる街を怪盗として荒らしてきた。そしてやっとあんたにたどり着いた。今度はあんたが堕ちる番よ!」
シャイリスさんはそう言い放つ。彼女の足元から黒い闇がその身体を染めていく。
「闇魔法!!『ダークウエポン!ナイトウイング!!』」
シャイリスさんの造り出した闇から人と同等の大きさの闇色の炎の翼を持つ女性の魔神が現れた。
「あれは…闇属性魔法の召喚獣……それもあんな魔力だなんて…。」
シャノワールさんが恐れる程の召喚獣だなんて…。
僕は圧倒的な魔力のシャイリスさんの闇魔法に全身威圧される。隣で全身を覆われているらいと。
どうなる……僕達の運命はいかに!?
皆様ここまでお読みいただきありがとうございます!
物語は続きます。
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