ミミック

ツヨシ

第1話

目覚めた。

本当に久しぶりだ。

本当に。

ここはどこだ? 

見覚えがまるでない。

久しぶりに目覚めたら、まるで知らない場所にいる。

いつの間にこんなところに来てしまったのだろうか。

そして今感じていることは、腹が減ったということだ。

周りを見わたした。

――あれは……。

目の前に何かいる。

二足歩行の生物だ。その身体の大半を、生き物でないなにかで覆っている。

なんのためにそんなことをしているのかは、まるで分らないが。

その生物はこちらを見ているようだ。

か弱い。

あまりにもか弱い生物だ。

その生物を見て思った。

――おいしそうだ。


母が食事の支度をしていると、娘が帰ってきた。

「ただいま」

「……おかえり」

外に遊びに行っていたのだろう。

しかし母は娘の声を聞き、娘の姿を見て違和感を覚えた。

――えっ?

その顔に表情と言うものがほとんどない。

そしていつもと違う抑揚とか生気が一切ない声。

姿も声も間違いなく自分の娘なのだが、なんだか別のもののように感じる。

まるで娘の姿をした、全く違う存在のようだ。

――まさかね。いくらなんでも。

しかし母の前でうろついている娘は、どう見ても娘とは思えないのだ。

娘は生まれた時から毎日見ていたのだ。

やはり明らかに何かが違う。

その様子、そのかもし出す雰囲気。

娘どころか人間ではないようにも思える。

もし人間でないとしたら、いったい何なのだ。

「ママ」

そんなことを考えていると、娘が母の前に来た。

母をじっと見る。

しかしその目の奥に、なにか邪悪なものを母は強く感じた。

あまりのことに何も言えずに娘を見ていると、その娘の顔がなくなった。


山間の小さな集落。

そこで騒ぎがあった。

六歳の少女がいなくなったのだ。

父親はもちろんのこと、母親や集落の人、そして警察までもが少女を探したが、いくら探しても一向に見つからない。

その悲しい事件の中、父親をはじめ集落の人が、みな気がついた。

娘の母親だ。

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