ファースト・エンゲン追放された呪詛騎士

立花戦

反逆の五等騎士

第1話―四つの前悪―

幼い頃に、抱いていた夢は誰にもあった。

どんな強敵を前にしても諦めない鉄の心。

劣勢で絶望に陥ても勇士ゆうしは常に希望を離さず持っていて包まれた闇の衣を照らしてくれる光の化身けしん

そんな、勇士に俺はなりたい!

その気持ちは大人になっても捨てられずに抱き続いている――。


「おい、突破したぞ。絶対に死守しろ」


剣を振るう屈強な騎士は後ろに控えている若き見習い兵に怒鳴り声で指示を飛ばす。


「は、はい!必ず…守りきります!」


汚れの一つもない新調したばかりの白銀フルプレートに全身を覆う騎士。

その隣には身動きが取れるように黒と焦げ茶色の軽装した薄緑色うすみどりいろの短い髪。おとなしめな雰囲気を纏う騎士の名はシザーリオ・ファクトベース。


「落ち着け。襲ってくる魔物は衛兵でも倒せる小物だ!訓練してきた事そのままにすればいい。必ず倒せるんだ」


「わ、分かっています」


逢魔おうまが時となれば凶暴な魔物が活性化する種族は多いと伝えられている。


「よし行くぞ!はっああぁーー!」


握る両手には、さびた変哲もない安価の剣。

牙を――角で突き刺そうとする魔物は漆黒の毛皮をした大型の犬ような姿をなしていた。

成していたという抽象的な表現したのは似てはいても別物。

目には禍々しく放つ血のようなまなこ

ひたいには闇に同化した真っ黒な角。

されど恐れるに足らず。

脅威とされるのは群れで見境なく襲ってくることと細くて殺傷の危険がある角。たったの二点だけ。


「ガウアアァァ」


おぞましい鳴き声に薄緑ベリーショートヘアの青年はひるむ様子は無かった。

落ち着いて弱点である角の付け根を叩き斬ろうと剣を振り下ろそうとしたが――シザーリオ・ファクトベースの内に眠っていた呪いが起動した。

視界が、頭が虫がうねるように歪んだ感覚がシザーリオを襲う。

いつもの激しいバランス間隔を奪われる。

生まれて神に授かれし加護の力〖アストラパーツ〗の一つ〖蓋棺がいかん〗によるものだった。


(こんな時にかよ!また現実から切って離されていく……)


ブレで振り下ろされた剣は角の付け根を右のギリギリかすれる。しかし、攻撃がはずれはしたが少し触れた斬撃に。


「グウク、グウウゥゥッ!!」


激しい痛みに悲鳴をあげる魔物ドリルダークバウ。

仕留めないとならない敵と認識したドリルダークバウは憎悪と怒気を向けて駆ける。


「うわあぁっ!?」


シザーリオは助走を加えた一撃を喰らった。

穴が開くほども深々と刺さることは無かった浅く、腹部に角がめり込んでいた。

血が流れていく。それがシザーリオ自身の血であると分かると特殊な能力を発現した蓋棺による乖離かいり現象から現実へと戻ってきた。


「だ、大丈夫ですか」


白銀の若き騎士が仲間を助けに動こうとしたが鈍足。全身を覆うほどの守りを装備した所為で全力で走ることが出来ない。


「何しているっ!お前の任務はなんだ?

騎士を守る事なのか?無辜むこの民じゃねぇのか!!」


「ッ――!?」


この魔物には命を狩れるほど脅威性は高くはない。けど、いつまでも放置していたら激しい痛みが命の危機にと繋がる。

仲間は最後の砦として魔物を食い止めている。必死に頑張っている。

シザーリオはそんな自分を比較すると自虐的になって笑いたくなるほど自暴自棄になりそうだった。


(この体質は生まれつきアストラパーツ…

神が与えた戦うための加護。

いや、違うな。俺のは…呪い。前世からの悪行を重ねてきた罰。負のアストラパーツ)


悲哀的な思考で自分を責めていた。

こんな最後を迎えられることに相応しいとさえ至る段階で叫び声を上げるものがいる。


「なに勝手にられそうになっているんだよ!このバカがあぁぁぁーーッ」


ドリルダークバウの頭上を槍を振り下ろして太刀打ち(柄の上部分)で叩き飛ばした。

打撃によって吹き飛ばされたドリルダークバウは地面を何度も激突しては、はね飛ぶ。

ようやく地面のバウンド地獄が終わると魔物は微動だにしない。たおしてくれた。

助けに入ったのは指示を飛ばした地方で任務を遂行に編成された隊長イービル・ホラー。


「俺様らが、片付けるまでマトモに時間稼ぎも出来ないのかよ。おいっ!いいか歯を食いしばれえぇ」


「があっ――」


屈強な騎士の拳を思い切っり殴られてしまったシザーリオは望んで、こんな失態するかと心で反論して気絶するのだった。

――任務は誰も犠牲ぎせいと負傷者を出さずに達成した。

その報告を聞いて知らされた彼は不満を抱く。

目覚めた頃には戦いは終わっていたシザーリオは負傷者の中に俺は含まれていないことに揉み消されたようで憤りを感じていた。


(これだから軍は嫌いなんだ!)


「おっと忘れていたぜぇ。

それとイービル二等騎士がお呼びだ」


「了解しました」


寝台から立ち上がって軍服を袖を通すべきかと一考したが、やめた。

わざわざ鎧で現れる事態ではないからだ。

救護テントを出て、数十分も余裕を持って入れるテントが駐屯地の真ん中に立てられている。そこへ向かって中へと入り込む。

入るなり厄介者やっかいものが現れたとイービルは邪魔者を見るような目を向けて最悪な歓迎をする。呼んできたのは隊長、貴方はずだろうと口に言えなかった。

執務机で書類を羽根ペンで作業してい手を止めてイービルは腕を組む。

シザーリオは机の前まで近づいて行き足を止めて両手を後ろに組んで姿勢を伸ばして視線を真っ直ぐと向いた軍式の敬礼を取る。


「貴様を呼んだのは戦力外通告だ」


唐突にそんなことを言い付けられてシザーリオは呆気に取られていた。

こめかみに怒りに歪む上官にシザーリオは慌てて応えようとした。


「その、戦力外通告とか?」


「聞いた通りだ。

貴様は、この騎士団には相応しくない」


「横暴です。いくら貴方でも勝手にやめさせることは出来ない。人事権を持っているのですか!」


「与えられている。これぐらいの裁量さいりょうを任されているから上級騎士。

シザーリオ五等騎士、貴様とは違うのだ。

荷物を抱えて任務を果たせるものも果たせないと独自であるが判断した。

お前には無理だ!闇の職場として問題だらけのギルドに一緒にしたくないが、これは追放だ」


シザーリオ・ファクトベース騎士の位は底辺にある五等騎士は騎士団から脱退の通告を一方的に突きつけられたのであった。

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