「他に何か行きたいところはあるか」

「ない」

 

 後は何も言わず、兄はアクセルを踏みこんだ。

 横顔が見えた。運転中の男性はかっこいいと、何かの雑誌で読んだことがあった。

 私は何とも思わなかった。それはきっと、私が妹だからだった。

 

「免許取りたいかも」

「年齢的には取れるじゃん」


 それはそうだ。だが、予備校通いの身で教習所に通うのも変な話である。

 昨日よりも速い。度々車線変更し、周りの車を抜いていく。

 兄の運転は荒い。一人の時はもっとらしい。

 泳ぎ上手は海で死ぬと言う。上手ですらない横好きは、やはり海で死ぬのだろうか。


「もうちょっとゆっくり走りなよ」

「道連れみたいなことはしないよ」


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