いつかあなたに会いに行くわ
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第1話 離れても交差する思い
幼馴染の三人、
その中で由姫は孝弘が好きだった。里奈もそうだが、里奈は由姫を
応援する事にした。それは孝弘も由姫が好きだったからだ。
中学に上がってからもそれは変わらず、二人は恋人同士のようだったが
まだどちらも告白はしていなかった。
それを里奈は気になり由姫に聞いてみた。
「ねぇ由姫、なんで告白しないの?」
「それをしたら終わちゃうから」
「何が?」
「友達」
「ああ確かにね。でも、それ以上になりたいんでしょ?だったら」
「そうなるのはその、結婚する時よ」
「結婚ね。それまでに孝弘に相手ができないと良いけどね」
「それはないわ。あいつを好きになる子なんて私だけよ」
「そうかな。まぁ頼りないとこもあるけど、そこが可愛いって
言ってる子もいるんだよね」
「言ってるだけでしょ。問題ないわ」
「だと良いけどね」
そうして由姫はまだ告白をしようとはしなかった。
そして、中学二年のある時、由姫は悲しむ事になる。それは
孝弘が引っ越しをしてしまうからだ。
それを聞いて由姫は部屋に閉じ籠りずっと泣いていた。里奈が
行くがそれにも応じない。
里奈は孝弘の部屋に行きその事を話した。
「どうにかならない?」
「ごめん。もう決まってるみたいだから」
「孝弘だけここに残るのは?この家がダメでも私達の家に」
「それも聞いたけどダメだった。ごめん」
そうして孝弘が引っ越す日がやってきた。外には里奈が
いるが、由姫はいなかった。
「じゃぁ里奈ちゃん、由姫ちゃんによろしくね」
「孝弘。私も寂しいよ。また会えるよね」
「うん。必ず会いにくるよ」
里奈が孝弘に抱きつき、離れた時、家から由姫が出てきた。
「由姫ちゃん!ごめんね」
「孝弘また会えるよね」
「うん。必ず会いにくる。だから・・・」
孝弘が由姫の耳元で囁いた。そうして孝弘は行ってしまった。
「由姫」
「大丈夫よ。また必ず会えるから」
由姫は涙を拭いて笑顔を見せた。それから数年が経ち、二人は
高校二年生になっていた。
その二人は地元じゃちょっとした有名人だった。それは二人は
バンドをしていたからだ。実力もあり容姿も可愛いので
話題になっている。特に由姫の歌はすでにプロ級で、いつ
メジャーデビューしてもおかしくないほどだ。
ここは由姫達が通う
屋上。そこにあるベンチで二人はお弁当を食べていた。
「由姫、今日もスタジオ行くの?」
「当然。遊んでる暇なんてないわ」
「それならすぐにオファー受ければ良いのに」
「今の私達で受けてもプロでは通じないわ。もっと上手く
ならないとダメよ」
「真面目だね。ま、それも彼の為だしね」
「彼って誰ですか?」
「もしかして由姫さんのか、彼氏さんですか?」
二人が話しているところに同じバンド仲間がやってきた。ドラムの
二人だ。二人は仲良しで一緒に音楽をやっていて、とあるライブで
由姫を見て一緒に組みたいと言い二人の演奏を聞いて由姫も認め
仲間になった。
「二人共、そういうことは聞いちゃダメだよ」
「えぇ気になりますよ。由姫さんでも恋してるのか」
「それが聞きたいならもっと上手くなりなさい。私達は
プロを目指すのだから」
「わかってますよ。由姫さんと組んでからは毎日練習して
ますから」
「私もです。またすぐにでもライブがしたいって思えるから」
「そうだね。由姫、次のライブはいつやるの?」
「私が納得してからよ。だから今日も厳しく行くわよ」
由姫はこれまで休むことなく練習をした。それも孝弘と会う
為だった。放課後、もう一人のメンバーベースの
合流しスタジオに行く。
そこは帰り道にあり、由姫達がいつも通っているスタジオだ。その
スタジオは近くにライブハウスもあり、楽器も多く、ここら辺では
よく使われる店だ。その店に入ると店員の男性がいた。
「いらっしゃい。毎日頑張るな」
「これぐらい当然です。今日空いてますか?」
「空いてるよ。じゃぁ記入してくれ」
その店員は気軽に話してくる大学生のバイトで
高くメガネをかけているがイケメンで、彼目当てに来るガールズバンドが
多い程だ。もちろん由姫は興味ないが。
「そういえば、またスカウトの話が来てたが」
「断ってください。私は自分が納得するまでプロになる気は
ありませんから」
「当然ですね。自分に自信がなければプロではないですから」
「洋子まで。由姫が二人いるみたいね」
洋子は由姫並みに厳しかった。なので洋子は由姫と一緒に組みたいと
言ってきてこのバンドに入った。由姫は記入を済ませた。そこには
Crosswise
と書かれていた。それは交差するという意味で、いつか彼と
会うためにと名付けた。もちろん里奈以外のメンバーには
その事を言っていない。スタジオに入り、練習をする。
里奈はギターを取り出す。由姫と一緒にする時に由姫が
里奈にギターをやってほしいと言われて里奈は練習した。
最初は個別に練習してから最後に合わせる。ちなみに
曲は由姫とキーボードの美麗が作っている。今の時代
のバンドはデジタルが多く由姫もそれを取り入れている。
練習を終えて、受付に連絡しようとした時だった。その
受付にいかにもビジュアル系バンドという奴らがいた。
「彼らもバンドですね」
「そうね。!?」
由姫が彼らを見た時だった。その中の一人が見覚えのある
様な顔をしていた。でも、容姿が全然違うので違うと
判断した。
「どうしたの由姫?」
「なんでもないわ。彼らもこの時間から練習をするみたいね。だから
私ももっと頑張らないとって思っただけ」
「もうこれ以上がんばらな行くて良いから。いつか体壊すよ」
「そうならないように、これから体を鍛えるのよ」
由姫は歌以外でも体力作りは毎日していた。それもプロになるには
必要だと判断したからだ。なので由姫はスタイルがいいが意外と
筋力もあるが、出てる所は出ていて、メンバーの中では一番の
巨乳だった。
それから家に戻り、筋トレをしてからお風呂に入る。湯に浸かり
ながら彼の事を思い出していた。
「まさか、でもあんなに変わるの?向こうも私に気づいて
いなかった。やっぱり気のせいね」
受付にいた一人を由姫は孝弘だと思ってしまった。でも、あの
孝弘があんな風になるなんて思ってないので違うと思った。
それが確信に変わるのはそう遠くない日だった。
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