神遊
第2章序 輪廻と異世界と世界線
「臨時ニュースです、今も地球に向かっている、惑星――」
――ドカーンっ!
――バババババっ!
あぁ、ヤダヤダ。隕石が落ちるって分かってるのに、46時中殺しあっちゃて。これじゃあ、原始時代の猿と変わらないじゃない。
ニュースを見れば、レベル99超能力者だの、魔術教会だの、街中でドンパチドンパチを伝える毎日。
どうせやり合うなら、ちゃっちゃと、全部纏めて終わらせちゃえば良いのに。
――ドカーンっ! ドカーンっ!
――ズ、ズ、ズド、ズドドド、ズドドドド!
はぁ……。毎日毎日、毎日毎日、五月蝿くて叶わないのよ! 本当いい加減、さっさと終わらせないよ!
……最後の最後まで続けるのね。このウジ虫どもめ。 貴方達が静かにしてくれないから悪いのよ? だから、わたしが、終わらせてあげるの! なんてね! てへっ
――――
「殿、一大事でごじゃる! 東軍に北野浜家が寝返ったでごじゃる! 我等も直ぐに出陣するでごじゃる!」
「あぁ、やかましい。黙っておれ! 直ぐに楽になる」
何故、殿は刀を向けて歩いてく来るのじゃ? しかも、顔が鬼の形相なのじゃ!
「と、殿っ! ご、ご乱心でおじゃるか!? 刀を収めて欲しいのでおじゃる!」
「すまぬな」
――ドサッ
――――
「これより、作戦名『真珠星』最終行動を開始する。勝利の時は来た。あらゆる陰謀に屈せず、己の……己の信念を貫き、我々はついに、聖戦を戦い抜いたのだ!」
「この勝利のために、我が手足となって戦ってくれた、仲間達に感謝を! 犠牲となった、全ての思いに、感謝を! 訪れるのは、俺が望んだ世界であり、全ては楽園扉の選択である!」
「世界は、再構築される!」
――プツン
――――
……ん?
「済まない、この2式型番、組み立てラインから、全部総点検しといてくれないか。間違いなく、リコールになる」
「畏まりました。納期はどれくらいで?」
「今月中にいけるなら頼む。難しそうなら、必ず事前に報告くれ」
……ここの、加圧ロボットがおかしいんだろうか? どれ、少し見てみるか。
――グシャッ
――――
な、なんてでかさだよっ! これが、最終決戦ってか? これ、生きて帰れっかなー。エムピーも全然残ってないしな。 無理だろーなー。
精々、ここで俺が食い止めて、こいつら逃がすくらいしか出来ねーだろーなー。
「なぁ、お前たちは、ここで引き返してくれ。無理なの、お前たちでもわかるだろ? 頼むよ、もし、生まれ変わりってのがあったら、その時は絶対コイツを止めるから、お前たちはその血を必ず残し続けるんだ」
「「「…………すまん」」」
そんな顔すんなよ、こっちが泣きたくなる……。
「気にするな、来世があればまた会おうぜ!」
「メガテン!」
――――
「女性初の大統領となりますが、今のお気持ちを」
「我が国ユナイ――」
――ズパーンッッ!
――――
「なぁ、お前様? いい加減、わしは疲れてしもうた。来る日も来る日も、怪魔が止まらぬ……」
「そんな事言うなよ。僕達が何とかしないと、この世界は、怪魔ゾンビだらけになっちゃうんだぜ?」
とは言っても、本当にきりがない。こんな時、あのアロハシャツが居てくれれば、なんて助言をしてくれるのだろうか。
いや、あいつはきっとこう言うのだろう。
僕はね、誰にも助言しないよ。君が勝手に閃くんだ。と。
「おい、そなた達」
「「……!?」」
「わしが、転移門を作ってやろう。そこからさっさと自分達の世界に帰れ」
「ほ、ほんとか……?」
「あぁ、嘘ではない。間違いなく帰してやる」
突如現れたのは、僕が良く知る相方の、大人になった時のような姿のソレ。ただ、どちらにしても、僕達には、何も手立てがないのである。帰れるとするならば、これを逃す手は。無い!
「そなたらの世界は、さぞや美しい世界なのじゃろう……」
――――
あ、あれは不味い……。
交差点を渡る高校生達、気が付いてない。
うごけ、うごけ! 助けなきゃ! このままじゃ、あの人達、トラックに轢かれてしまう!
――キキーーーッ!!!
――ドンッ
――――
――ハッ!
(戻ってきたかの? どうじゃった?)
――そこは、デメテル様と、深い意識で繋がる無の世界。
どうも何も、気分最悪ですよ! 何十回、僕に死の瞬間を見せつける気ですか?
(転生とは何か? と聞いてきたのは、おぬしではないか?)
確かに聞きましたけど、あれだと、ただ死ぬ恐怖しかわかりませんでしたよ! ここ数ヶ月、デメテル様、機嫌悪すぎますよ? 嫌がらせにしか感じません!
(ふむ。とは言ってもの。念の為、妾も死と再生の儀式を行ったとでも言えば良いのかの。ちなみに、先程まで見せたのは、妾の秘儀を使わんでも、勝手に行ってった奴らの記憶なんじゃが……)
口で説明するのは難しい、と言っていたデメテル様。女神図書館のような、知識を覗いても、先ず理解出来ない始末の、その儀式とやらが、何なのかもよく分からないけれど、死と再生と言うことばからして、生き死に関わる儀式なのだろうけど。
デメテル様とは、出会った頃に、意識というのか、所謂魂というものなのか、恐らく大体の同調をした事がある。ミレーユ母様に語りかけていたあの日だ。あの時は、僕もわけが分からず、目の前の母様を眺めていた。同調の其れは、あれ以来無く、出会った日を除けば、その1度だけだったかな。
今回、長時間、意識を流し込まれ、人の死を無理矢理見せられてしまったわけだ。だけど決して、他の記憶は流してはくれなかった。
本当、不思議だ。同一化みたいな事になった筈なのに、知識は何時でも見せてくれるけれど、記憶は見せてくれないのだ。
大地と豊穣という名の女神。平和的に感じる呼称なのだけれど、この言い方だと、生かすも殺すも、妾次第、とでも言うつもりなのだろうか。
暫くデメテル様にブツブツ文句を言っていると、急にデメテル様は、しおらしく語りかけてきた。
(おぬしの言うように、確かに妾は暫く機嫌が悪かった。其れは認めるし、謝ろう。だが、神の名に誓って、おぬしは妾の子同様に、大切だと感じておるし、形がどうなろうと、守って行くつもりじゃ)
なんですか、急に……。しかも子供って……。
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