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 娘を大学や専門学校へ行かせるだけの貯蓄は母親になく、娘は、地元で自分の友人の父が経営する会社に就職した。

 母親は、学費の懸念はさて置き、娘は進学して勉強をするだけの甲斐性が無いと考えていた為、会話の端々でさり気無く就職するよう説得していた。自分の娘がまんまと就職の進路を選んだことに母親は喜び、自身の職場の同僚等に自分の巧みな話術と娘の愚かさを自慢した。


 娘からは毎月5万円の生活費を受け取り、その代わりに、衣食住など今までと同じ生活を提供することにした。


 しかし、半年も経たない内に娘は県外への転勤が決まり、母親は大きく不安に駆られた。

 自分の収入減もそうだが、なにより娘は自分から離れたがっていないと信じていたからだ。

 転勤が決まってからの娘の行動はあまりにも迷いがなく、あっさりと実家を出て県外へ引っ越した。

 母親は娘が見栄を張っていると思い、甲斐甲斐しく連絡を取っていたが、娘からの連絡は一切無く、それが次第に、娘が非常に冷酷で薄情な人間だと感じるようになった。そちらがそう来るのであれば、今まで娘に与えた愛情、金、全てにおいて、こちらもそれ相応の搾取をしてやろうと、母親は考えるようになった。それは、娘に対して社会の厳しさを教えるという大義名分の元、母親の中で正当化された。




 一方で娘は、高校在学中から友人一家に協力を仰いで計画していた県外への脱出が成功し、一先ず安堵していた。

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