上司が冷たいのです。

『じゃあ、お金のことが解決すれば良いのかな?』

「いや、それだけじゃダメですね」


園長が冷たいのです。


「そもそも、私が働きだしてから今まで丸三年。園長が三回変わりました。あぁ、正確には四人なんですけど。一度目は無認可から認可への移行だったので、保育士資格を持っていなかった前の園長は、認可保育園の園長になれず。次の園長は一年と数ヶ月でクビになり、その人の代わりに来ていた園長も一年と数ヶ月で元の園に戻ることとなり、今回、今まで同グループ内の別の園で働いていた園長が産後の復帰ということでここに来ることになりました。その人が、こう……自分をカースト上位に置いていたい、みたいなタイプの人なんです。その為に、各職員に別の職員の悪口を漏らしたり、あの職員を手懐けたい、とか話をしているんですけど。普通に考えて、前からこの会社内に居たとはいえ、私たち職員にとっては新しい人なんです。そんな人が急に来て、みんなの悪口を言っていたら、職員同士で情報共有されるのが女社会のあるあるというか。これは憶測なんですけど、誰も懐かないことへの八つ当たりみたいなものかな、と思ってます。それでも主任として職員と園長を結ぶ立場にいる以上、板挟みにならないといけなくて」

『つまり、感情や人間関係の面での板挟みが辛いんだね』

「そうですね。そして前の園長には、主任ってそういうもんだから園長より大変だと思うよ、って言われました。今の園長にも、その辺の大変さは当たり前のことだから覚悟してやってほしい、と言われたのです。そこで、あれ? って思ったんです。会社って、そういう大変なことを分担して、協力しながら大きなことを成し遂げる為のものであって、大変だからね、って突き放して押し付けるような物言いをするのは違うんじゃないかな、と。勿論、園長の方が仕事量は多いと思います。主任なんて正直言って大したことはしてないです。けど、言い方というか、考え方というか、そうやって思っていても言葉で突き放されたら、やっぱり腹が立ちました」

『それは、どうして腹が立ったんだと思う? なんと言われたら許せていたと思う?』


どうして。

私の本心は、どこにあったのだろう。その言葉を向けられた時、本当に感じた感情は、一体どんなものだっただろう。

大変な仕事になる、と思っていながらも、一緒に頑張っていこう、という意思が見られなかったことが寂しかった、かもしれない。勿論、その前の関わりが良くなかったからこそ、苛立ちが増している部分もあるけれど。冷静にその状況だけを判断するのならば、せめて、一緒に頑張って良い園にしていこう、という姿勢であってほしかった。



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