23冊目 永久の眠り
あるところに不眠症に悩まされている男がいた。
男は幼い頃から寝付きが悪く、幼稚園でのお昼寝の時間や学生時代の修学旅行などの就寝時間にも中々寝付けかった事から、その間、誰とも話せずに孤独を感じる事も少なくなかった。
そんな男の事を両親は気遣い、ヒーリングミュージックやアロマなどの睡眠導入に効きそうな物を見つけては男に勧め、病院にも通ってみたが、それらも男の入眠の助けにはならず、男はその度にがっくりと肩を落とした。
そんなある日、男はある男性と出会った。男性は自身を睡眠の研究者だと名乗り、男が少しふらつきながら歩いているのを見かけ、もしや睡眠について何か問題を抱えているのではないかと思って声をかけたのだと言った。
男はそんな男性の事を怪しんだが、睡眠について悩んでいるのはたしかだったため、自身の幼い頃からの不眠症について打ち明けた。
話を聞くと、男性は男に対して幾つか質問をした。質問の内容は、家族構成や普段の睡眠の方法、今までに試した対策などであり、男はそれらに対して正直に答えていった。
そして、幾つかの質問が終わった後、男性はどのような手段を使ってでも眠りたいかと男に問いかけた。男はこれまでの質問とはどこか違う内容に戸惑ったが、幼い頃から出来なかった長時間の睡眠が出来るならとその質問に対して静かに頷いた。
すると、男性は嬉しそうな笑みを浮かべると、男に対して自分についてくるように言い、それに対して男は一瞬
そうして歩く事数分、二人は一軒の家に到着した。男が男性にここはどこかと問うと、男性は自分の家だと答え、ここには様々な睡眠導入の道具などがあるからそれを試したいと言い、玄関の鍵を開けると、そのまま家の中へと入っていった。
男もその後に続いて家の中へと入ると、家の中に漂っていた異臭が男を襲い、男が軽い吐き気を覚えながら咳き込んでいると、男性は笑いながら男を気遣うような言葉を掛け、異臭の正体は先程話した睡眠導入の方法の一つが出す臭いだと話した。
男は異臭で少し具合が悪くなりながらもそういう物かと納得し、男性の後に続いて家の中を進み、リビングに入ると、そのままソファーを勧められた。
男が大人しくソファーに座ると、男性は男に対して待つように言った後、そのままキッチンへと姿を消し、数分後にほかほかと湯気をあげるマグカップを持ちながらリビングへと戻ってきた。
そしてマグカップを男に渡すと、中に入っていたのは何の変哲もない紅茶であり、男性は特製の睡眠薬が入っているから、まずはそれを試してほしいと言い、男はそれに対して頷くと、火傷をしないように気を付けながら紅茶を一口飲んだ。
すると、男は意識がスーッと消えていくのを感じ、それと同時に体の力が抜けていくと、手から落ちたマグカップは中に入った紅茶を撒き散らしながら床を転がり、その様子に男性は満足そうに頷いた。
そして、だんだん眠くなっていく事に男は幸せを感じ、そのままゆっくり目を閉じると、男はソファーの背もたれにもたれながらすやすやと寝息を立て始めた。
男性は男がすっかり眠った事を確認すると、男の胸に自身の耳を当て、男の心臓の鼓動に恍惚とした表情を浮かべると、男性は両手で男の首をゆっくりと掴むと、そのまま力強く圧迫していった。
それに対して男は苦しそうな表情を浮かべたが、その目は中々開かず、男性が緊張と興奮で額に汗を浮かべながら男の首を絞め続けると、男の口から出ていた寝息は徐々に消え、数分後には完全に消えた。
それを確認し、男性は心から嬉しそうな笑みを浮かべると、床に散らばった紅茶を
しかし、男性は男のようには眠らず、永遠の眠りについた男に対しておやすみなさいと声をかけると、男の死体をソファーから抱えあげると、そのままリビングから出て、家の奥へと消えていった。
その後、男性は家の中から漂っていた異臭を怪しんだ近隣住民の通報によって駆けつけた警察に逮捕されたが、男の家の中にあった隠し部屋からは乱雑に放置された服を脱がされた幾つもの男女の死体とホルマリン漬けになった人間の心臓が発見されたという。
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