脚力さいつよお嬢に捕まった男はおぱんつの夢を見るか
初月・龍尖
「死ね! クソアリ!!!」
Tグループの総本山であるビルの1室に今年の新入社員が集められた。総勢何人かはわからないが1室を埋め尽くすほどの人数だった。
正面のモニタが起動し会長の長い話、もとい訓示が始まった。1時間ほどが過ぎて会長の長ったらしい話が終わり数人を残して退出させられた。
なぜか残された数人は一列に並ばされた。
白髪交じりの男が列の前に一脚の椅子を設置した。
その男の姿は会社員と言うよりも執事と言った方がいいような姿だった。
「お嬢。準備が整いました」
執事風の男が声を上げる。嫌に低い声だった。
扉が蹴り開けられひとりの女性。いや、少女が飛び込んできた。
「待ちわびたぞ、キサキ」
執事風の男、キサキは少女に向かって一礼をして左手を椅子の方に向けた。
「お嬢。まず座ってください」
「そうね。まずは、じっくり見ないといけないから」
並んだ男のほぼ全員が異様な負の気に呑まれていた。
キサキからは冷たい目で見られ、少女からは上から下まで舐め回される様に見られ、何がなんだか解らなかった。
しばし少女は男たちをじっとりと見てキサキに書類を渡され脚を組み読みだした。
組んだ脚の隙間からおぱんつがちらりと見えたがそれに気が付いのはひとりだけだった。
人数分の書類をさっと読み終わり少女は椅子から立ち上がった。そして、真っ先におぱんつに気が付いた男の前に立ち股間を蹴り上げた。
「ヘンタイっ! わたしの下着で興奮するクソムシがっ!! 去勢してやる!!」
泡を吹いて崩れ落ちる男を尻目にキサキは少女をなだめた。
「お嬢。お嬢の脚力で蹴られたら不能者になってしまいます落ち着いてください」
泡を吹いた男はどこからともなく現れた男たちがさっと運んでいった。
「んー↑ふんふん♪」
少女は鼻歌を唄いながら一人ひとり足先を踏んでいった。彼女の靴は少しヒールが高くその先で刺す様に踏んでいった。
悲鳴を上げる者はすねを蹴られ、我慢しても顔に現れれば腹パンをされた。
そうして残ったのはふたり。
辛うじて最後まで耐えたひとりは脚が震えてしまったので結果的に尻を思いっきり蹴られてアウト。
もうひとりは最初から最後まで微動だにしなかった。
少女は動かなかった男のネクタイを引っ張ると顔を近付け満足そうに言った。
「あんたが新しいわたしのイヌ、いいえアリね。よろ」
少女にそう語りかけられても顔色を変えない男にキサキの目が光った。
実際には緊張の山を超え立ったまま気絶していただけなのだが。
少女にネクタイを引っ張られまるで犬の散歩の様に部屋から連れ出された男、アリカタは正気に戻って慌てた。
(女の子に引っ張られてる? 何で? 俺はどこで意識を失った? どこに連れて行かれるの?)
混乱の渦に放り込まれたアリカタは流されるままエレベーターでビルの上部にある少女の自宅まで連れ込まれた。
「たらまー」
少女は扉を開く時に足蹴りする癖があるようだ。気の抜けた声と共に玄関を蹴り開いた。
「お嬢、家は資産です。大切に扱いましょう」
後ろについていたキサキは一応ながら少女に忠告をした。
少女の声を聞きつけて奥から一人の女性が現れた。
「あらあらまあ。おかえりなさいレンリちゃん」
少女、レンリを成長させて柔らかくしたような女性だ。レンリの母リナである。
「その子が今年の子?」
「そ。キサキ、履歴書」
さも当然の様にアリカタの履歴書はキサキの手からリナへと手渡された。
「へええ。いい大学を出ているのねえ」
履歴書を一瞥するなりリナは声を上げた。
(え? 一瞬見ただけだよな? 速読? マジで?)
アリカタは速読は習得している、と思っていたが上には上がいるものだ。
「さて、あんたはさっきからわたしの事をいやらしい視線で見ているわね。クソアリ。腹パンがいい? それともその玉を潰されたい?」
アリカタは即座に脚を折って床に両手をつけた。
「どうか、玉だけは。平に、平にご容赦を……」
下げた頭にレンリは左足を載せアリカタの少し浮いた額を思いっきり床に打ち付けた。
「まあいいや。まだ時間があるからな。次は無いぞ」
脳が揺れ混乱するアリカタは無意識に顔を上げてしまった。その目に写ったのはスカートからのぞく緑色のストライプおぱんつだった。
アリカタの視線を確認したレンリは
「死ね! クソアリ!!!」
と吠えてアリカタの顔を躊躇なく蹴り上げた。
レンリはキサキになだめられながら頬の腫れたアリカタとあらあらと呟くリナを残して奥へ消えていった。
腫れた頬に手を当ててリナは
「レンリちゃんはなんでこんなもやしが好きなのかしら。男って言ったらもっとガッチリとした筋肉のある子がいいと思うのに……」
と呟いた。
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