誰も悪くなくするためのお話
真黒クロ
僕の願望
水曜日の5限、情報の授業がしんどくなった。先生がいないのを思い知らされるから。
普段の学校生活では何とか無視できるんだけどな。
角を曲がったら、先生がいる。そんな妄想で埋め尽くされた頭。
僕の中では、先生はまだこの学校に在籍している。
しかし。
前を向くと、違う顔。耳からは違う声。違う雰囲気。違う足音。違う匂い。違う、違う違う。
4月から何もかもが違ってしまった。
それでも情報を嫌いになることはできない。
先生が教えてくれたものという記憶があるから。
僕にとってパソコン室はいつまでたっても先生の場所だ。今となってはパソコンさえも新しくなってしまったけど。
嫌いじゃない、決して。
ただただ、しんどいだけ。
何でみんながあんなに馴染めるのかがよくわからない。先生がいないこの学校に、先生でない教師が教える情報の授業に。どうして何の違和感も抱かないのだろうか。多分どっちでも、誰でも変わりないんだろう。
みんなにとってはただの教科担任だ。
前から寝てたような奴もいるし。
ただ、あまりにも授業のテンポが気持ち悪いのは否めない。
人のせいにするのが悔しくて、よく知らない教師のせいなんかには絶対にしたくなくて、授業の雰囲気の悪さは自分が積極的に参加していないせいだなんて自惚れてみたりする。隣のクラスのあいつがいればまた話は変わってくるんだろうが。学年のムードメーカーみたいなあいつ。どの授業でも、ワーワーと騒いでいて、こっちのクラスにまで声が聞こえてくる。
すげえな。誰でもいいのかよ。
まあ、こんなのは所詮八つ当たりで、自分の弱さを露呈しているだけだけど。
とにかく、いつまでもこのままなんて耐えられない。
だから僕は、こう考えることにした。あの人は臨時の教師だと。
先生は産休でいないから。
その代理で、臨時で来ているだけだと。
確かに無理はある。
何だ産休って。男性妊娠ってどんな世界観だよ。
それに、妊娠なんていったら誰かが孕ませたってことじゃないか。
そんなやつ、僕の妄想上でも到底許せない。
だからさらに、こう考えることにした。
これは無性生殖のお話だと。
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