263-聖魔法大武道場と私

『主殿、私が千斎殿に出迎えをお願いしました。私はを見ております故。お待ちしております』


「いやあ、騎士団官舎で自ら洗濯をされるお姿、あらゆる身分の者にお優しいお心映え、騎士団副団長令息との友情! 全く持って素晴らしい! 恐縮ながら殿下の書の友としましても、コヨミ王国騎士団の上級大将としましても、鼻が高くてございます……」


 アイスコーヒー片手に騎士団での第三王子殿下の人気ぶりに熱弁を奮う千斎さん。

 対するは、「良く見ていますな、然しながら当然の評価かと」と、うんうんと肯く浅緋さんというツッコミ急募な状況に、寿右衛門さんの念話が届いた。


 いや、今めちゃくちゃ貴方が必要なんですけれど……来てはもらえませんよね、目下お仕事中ですから。

 あ、でもそうか、現状打開策があったよ! 空中!


「お二人共、今、寿右衛門さんが空中の警戒みたいな事を念話で言ってましたけれど、空中闘技場って大武道場の事ですよね? 早く見てみたいなあ!」と言ってみたら千斎さん浅緋さんが「よくぞ聞いてくれました!」みたいに笑顔になった。


 ありがとう、寿右衛門さん。


 焼きチーズ添えホットドッグはおいしかったので幾つか買い込んでリュックさんにお願いしました。

 騎士団魔法隊所属騎士さんのご実家のお肉屋さんらしい。包み紙に店名が書かれていたから必ず、また購入します!

 もちろん、兄上のインタビュー記事が載っている新聞も大事に収納済。


 そうそう、リュックさんは食品、新聞等をきちんと分けて、それぞれ別の箇所に収納してくれていますよ!


 それにしても第三王子殿下を称える熱い語らいが終わってくれて良かった。


 改めて、寿右衛門さんありがとう。


 いや本当、ハイパーと重要文献ぽい参考書で知識を得ていて楽しみだったんだよね、聖魔法大武道場の名物、空中闘技場。


 という訳で、千斎さんも合流して、一緒に来ました聖魔法大武道場、別名空中闘技場。


 針葉樹に囲まれた綺麗に舗装された通路をゆっくりと歩くと、少しずつ視界に入って来たのは。


 多分、観客席と思われる大きな建物と、付属する空中に浮いた石造りの闘技場。石の壁に刻まれた聖教会本部の紋章が威厳をもたらしている。


 観客席の構造は土を生成して焼いた素焼きのタイル、テラコッタタイルが敷き詰められた土台に魔力が満たされていて、建物部分には白タイル。更に膨らんだシェル屋根が上に。


 そして、土台から闘技場へと続くのは美しい螺旋階段。


「うわ、本当に空中なんだ……」


 ついに来ましたよ、試合前日の試合会場……感慨深い。


 うーん、階段の最上部の空中に浮く闘技場、浮いてる!


 あちらの空中庭園とされる建物には学会のついでとかで一輪先生と何ヵ所か行ったことがあるけれど、あれも見事だった。

 だけど、これは本当に浮いてるんだよね、感動!


 感動しきりの私に、浅緋さんが説明をしてくれた。


『実は昔、私達精霊獣達が全力で動いても壊れない堅牢な施設を作ったのが始まりなのです。因みに今回の試合ではこれを地上に降ろします。出場者に浮遊魔法使用を許可しても良かったのですが、それよりは治癒魔法の許可の方が良かろうかと。まあ、それも使用する武器防具によりますがな』


「最初の挨拶だけは空中から、その後、下に降ろします。なかなか盛り上がるのですよ。……ああ、この術式はこの試合が終わりました頃から解禁にいたします。正式な告知はハンダ-コバルト殿の叙爵時の予定ですが。まあ、千斎殿には会話でお話ししても良い内容でしたな」


 武器防具によって治癒魔法の使用が許可されたりされなかったり、って事だね。


 そして、ついにセレンさんの念話術式が解禁になるのか。 

 まあ、我々はかなり使いこなしてるけどね。それでもやっぱり、叙爵時にきちんと解禁の告知が予定されてるのがすごい。


「殿下、茶色殿が」


 千斎さんに言われて頭上を見たら、寿右衛門さんがぱたぱたと。


『主殿、いかがですか。空中からもご覧になりますか?』


 見られるの? 見る、見ます!




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