210-箱と私達(2)
「殿下の友人、数字に強いという蝙蝠からの指示二点に合致いたしますカントリス・フォン・マンガン伯爵令息が己の未熟を自省し、婚約者との絆を確認し、15の数に気付き、魔力切れ寸前となるまでに集中した結果があの箱にございます」
「主殿、先程黒白殿の言われたのは正しき事かと存じます。箱からの害意は見られませぬ。主殿に魔法をお使い頂きたいのは無論に存じますが、その中でも特に聖魔法をお掛け頂きたいと申し上げましたのは、私達の使えぬ系統がそれであるが故に存じます」
ジンクさんと寿右衛門さんから説明を受けながら、聖魔法発動の準備をする。
二人が力を合わせたら聖魔法以外の全系統が揃う事自体が凄いと思うのだけれどそれは全く意に介されていない。
コヨミ王国の聖魔法使用者は聖魔力順に聖魔法大導師様浅緋さん、大司教様百斎さん(このお二人はお互いが自分より上と仰るので一応。多分色々ややこしくなるからだと思う)、専属講師たるアルミナさん、聖女候補セレンさん、そして全属性保持者ナーハルテ様。
そこから少し(かなりだと思うけど)下がって非属性の魔力保持者となった私こと第三王子ニッケル・フォン・ベリリウム・コヨミ。
もしかしたら他の聖女候補さんとか、私が知らない凄い方がおられるかも知れないけれど、今のところはこれで良いらしい。
現在王都周辺にいるのは上位三人だけれども、どの方が対応されても色々と大きな事態になりかねない方達。
ただでさえ求者関連案件なのだから、隠せる部分は隠した方が良いに決まっている。
納得したところで、いきますか、と思ったら、
『待って。保存袋をたくさん用意したから』
あ、そうかありがとうリュックさん。
これは助かる。ジンクさんと寿右衛門さんの手に、かなりの枚数の保存袋。
「「ありがとうございます」」
「じゃあ、開封の聖魔法でいいかな」
「「お願い申し上げます」」
二人が揃って防御魔法と対魔法防御魔法を掛けてくれた。
これが、開始の合図だ。
印章箱に向かって聖魔法を送り込む。
多分、アルミナさんにお会いした時に頂いたご指導が効いている。
魔力の加減が上手くなったのが自分でも分かる。
すると、音も無く、静かに開く印章箱。
中から出て来たのはかなりの枚数の書類と、何だろう、何かの塊。
『コヨミン様、一応先に探らせてください。……はい、大丈夫です。確認作業をなさって下さい』
ありがとう、黒白。
一応、二人を見たら肯いてくれたので私の所に落ちてきた紙の内容を確認する。
何だか、私に向かって来てくれた様なその書類。
視線を落とすとそこには。
「え、これ、どう見ても……」
そこには、私にとって見慣れた文字が。
そう、日本語が書かれていたのだった。
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