199-お茶会のその後の私

「……以上が魔法局局長殿からの真の依頼内容です。まずは全局長と情報共有。それから魔道具開発局局長たる私と局長懇談。その後は財務局局長殿へ、という訳です。情報共有、とは申しましたがあくまでも元魔法局副局長が局長に再度の書類の精査を願った、と言う形で報告した局もございます。求者に関する情報は魔道具開発局と魔法局、財務局、医療局、法務局の高位並びに騎士団の一部のみが王宮、聖教会本部と共有しておりますので」


 例のお茶会から数日が経過して、今日の私は魔道具開発局局長ジンクさんの執務室にお邪魔しています。


 執務室とは言っても、以前もお招き頂いたあの場所、存在自体が特別なパティオの事なので魔道具開発局局長が第三王子殿下を呼びつけた、とかにはならないので安心。

 その逆も、然り。


 お茶会の日、ナーハルテ様との黒白白黒による直接通話に感動した私。


 お茶会終了後、聖教会本部準々貴賓室へ戻り、辺境区でのイットリウム君とカリウムさんのお話(選抜クラス合格おめでとう!)、妖精殿であられる羽殿の事、ネオジムさんのご血縁の伝令鳥でいらした黒殿の事、嬉しい緑簾さんの立派な成長ぶり!そして勿論、のナーハルテ様のご様子、セレンさんネオジムさんの事、と色々を細かく寿右衛門さんから教えてもらっていたのでした。


 実際、あの後のお茶会でのお話もとっても有意義だったし。


 その為、私はやる気に溢れ意気揚々と翌日の魔法局事務作業に出掛けたのでした。


 ですが、何故か、カントリス君に物凄い勢いで体調とか色々心配されて、挙げ句の果てにには土下座までされそうになったのをリチウムさんとナイカさんとカルサイト君が、

「「「そうじゃない! 仕事で殿下に恩返し!」」」と全員でツッコんでくれたりという事態があったので何だろう、と思っていたのがそもそもの始まり。


 何だかんだで、その日の事務作業はきちんと終えて準々貴賓室に帰ったら黒白に連絡が。

 それが魔道具開発局局長ジンクさんからの通信で。


 そういう訳で私は今、ジンクさんのパティオにいるのでした。


 そうだ、カントリス君、私から見ても目を見張るくらいにやる気と成果は出ていたので心中で何か期するものがあったんだねきっと、と思っています。


 なんて事を考えつつ、やっぱり気になるあの存在、求者。


「そうですか。フード……、求者の事を知る人達。後はハンダさんやカバンシさん、中央冒険者ギルドギルドマスタースコレスさん達ですね」


「そうです。他の情報共有者達は茶色殿が存じておられます。また、指輪他の品々は、予定数を発見し終えました事をご報告申し上げます。殿下には多大なるご協力を誠にありがとうございました」


『精霊双珠殿、我が師、学院長殿といった偉大なる御方々、主殿が想像される皆様方につきましては言わずもがなと主殿にはお分かり頂けましょう。他の方々につきましては、必要に応じてご説明申し上げます』


「そうだね、そうしてくれたら助かるよ寿右衛門さん。ジンクさん、こちらこそ報告ありがとうございます」


 黒白がパワーアップしてくれたお陰で私の魔力またはコヨミさんの末裔という秘匿事項をご存知の方達からの連絡が格段に受けやすくなったので、きちんと約束をして寿右衛門さん達と転移して伺ったのだけれど、かなりの重大報告を頂いてしまった。


 指輪達の発見完遂! が嬉しい方では最大事だね。


 あ、実は眼鏡な有能専属秘書ギベオンさんはジンクさんの代わりにお仕事中です。


「話を戻しますが、やっぱりかなりの確率で求者ですよね、その蝙蝠。求者、という表現は手紙だから難しかったのでしょうか」


「その通りです。まず間違いないかと。但し、シメント元魔法局副局長への直接の確認はまだ行ってはおりません。必要ならば記憶を読む等も必要になるかと存じますが、出来るならばなるべく行いたくはないですな」


 私もそう思う。


 シメントさん、今はもうさん付けしても良い位に反省しているらしいし、そんな人を求者関連で惑わせたくはない。 

 怪しい蝙蝠、のままなら良いけれど、求者と相対した、と認めさせてしまったら刑務所併設更生施設の先生という仕事からは降りてもらわざるを得なくなるし、それだけでは済まないだろう。


 もし、本当に確認が必要なら、シメントさんではなく精霊珠殿にお伺いしたら直接ではない形で何とかして下さるかも知れないな。うん。


 よし、取り敢えず更なる確認をしよう。


「それで、第三王子周辺の数字好き、カントリス君に白羽の矢が立てられる事になった、と」


「そうです。然しながら……」

 カントリス君だけでは不安だからと開発局局長令嬢ナイカさん、開発局副局長令息カルサイト君、財務大臣令嬢リチウムさんが集められ、更に第三王子殿下が参加、という訳だった、と。


 そうなると、

「……嘗ての聖女候補屈指の実力者、現在はコヨミ王国の社交界と実業界を監督される存在、アルミナ・フォン・コッパー侯爵閣下が私との茶会に臨まれたのも、その辺りが理由なのでしょうか」


「そうですね、あの方は機を読むのに長けた方。元々第三王子殿下にお会いになりたいとは思っていらしたでしょうが、令息スズオミ君と友人であるカントリス君に他意を持って接する者達を遠ざける良い機会とされた可能性もあるでしょう」


 とりあえず、アルミナ様の聖教会本部でのお立場、ライオネア様の魔法の師匠であられる事はイケメン令嬢様方のご両親は皆様ご存知で、筆頭公爵家のみ、ご家族全員がご承知の事だとお茶会でアルミナ様から伺った。


 訊かれたら答えても良い場合は答えるし、機密ではないけれどわざわざ公にする内容ではない、という事らしい。


 私はあの場で聖魔法を掛けて頂き、必要な場合には話しても良いとされている。

 私の判断が誤っていた場合には、音声になる前に霧散。でも全く人体に影響を及ぼさない。すごい。この点は寿右衛門さんの保証済です。

 署名本に頂いた術式も解析する楽しみが出来たし。これはまだまだ先だと思うけれど。


 あ、黒白・白黒の伝達機能、留守番電話に似た機能の名称も決まって、留守となりました。


 私は実家には存在している固定電話の留守番電話機能にはあんまり馴染みがない世代だけど、一輪先生の上司、学部長でもある教授の研究室とご自宅でバリバリの現役だったから仕事では意外と使い慣れていた。


 だから、その経験から黒白に「こんな事は出来る?」って相談し易かったんだよね。


 実は、その相談をしたのがナーハルテ様との感動の通信をした後のあのお茶会会場だったから、何と黒白はアルミナ様とライオネア様の魔力まで頂いてしまって、益々強力に。


 あと、お二人からナーハルテ様の昔のお話とかも訊けたから、私的にはあのお茶会、むしろ大感謝!だったのだけれど、あくまでも形式的にはカントリス君の過去の女性問題を解決して下さったアルミナ様の突然のお茶会同席に驚かれた第三王子殿下、という風を装う事になっている。


 これは、アルミナ様、ライオネア様、スズオミ君とお茶会参加者達が承知の事なのだって。

 だから、スズオミ君はお茶会を離席する事も分かっていたのだろう。


 緑簾さんの事だから、辺境区の為になる方法で、且つ、スズオミ君の為にもなる事を考えてくれている筈。頼りになる鬼の召喚獣さん、主は貴方を信じてるよ。


 そんな感じで、その辺りの解説をジンクさんが詳細にして下さったので私の最近の懸念はかなり解消。


 あ、そうだ、ジンクさんも黒白に魔力提供をして下さいました。


「わざわざ申し出をなさらずに提供されている方々もいらっしゃいますね」

 とジンクさん。

 そうなの? と黒白に訊いたら、『実は』だって!


 うーん、黒白、私が思う以上に成長していて、とんでもない魔道具になっているのかも。


 そうそう、成長と言えば、カントリス君。


 彼がこれからイットリウム君の様に成長して、リチウムさんとの婚約関係が進展したら、また何かが起こる、とかなら。


 もしかしたら、それが求者が言う素敵な物、だったりするのかなあ。


『ジンクさんにお伝え出来る程の材料がまだないから、寿右衛門さんにだけ、でよろしくね』

『主殿、了解いたしました』


 取り敢えず、だけど一応、寿右衛門さんには、ね。


 求者が寿右衛門さんのことを鳥さん、って言っていたのは、とりあえず今は関係ないよね。

 今の話題、蝙蝠だし。



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