190-留守番の私達(2)
手紙は良いよねえ、あ、カントリス君、まさか女性に恋文と取られかねない手紙とかややこしくなる可能性がある花言葉の花束とか、渡したりしてないよね?
イットリウム君に相談した方が良いかな?
そんな感じで手紙を端緒にして色々考えていたら、今度はちゃんと予告(?)付で音声が聞こえてきた。
今度こそ、きちんと対応するぞ。
『『頑張れ!』』
ありがとうね、リュックさんとハイパー。
『はい。……どうぞ、聞こえましたか?』
ええと、これは黒白だね。お疲れ様。はいはい。
『主殿、失礼申し上げます、寿右衛門に存じます。ご相談したい件が。働いている等の事情があり昼の時間帯には学校に通えない者、資格取得の為に働きながら通いたい者、働きたいのに資格が無く働けない、又は働きながら資格取得の為に学びたい、等の場合に参考にさせて頂けます機構の案はございますでしょうか』
『あ、はい、聞こえてますニッケルです(さすがにマトイです、はマズいよね)。寺子屋、はちょっと違うかな。うん、それなら夜間の学校。夜学だね。あと、職業訓練所。前者は働いている人とか、事情があって就学できなかった人とか。後者は就職希望者に色々学んでもらいながら、その間の生活費を国が補填するの。通学させる雇い主に補助金とか出せたら、活性化するかな。ええと、予算ならリラシナさん? あと、救済所も増やしたら良いのかな』
多分、デキる伝令鳥寿右衛門さんだから私が話している内容がこちらではマズい仕組みなら他の人の耳には入れない様にしてくれている事でしょう。
予算とか法律とか諸々は要相談だろうけれど、お役に立てたら嬉しいな。
『『あ』』
確かにあ、だ。いきなり高度な転移術式の気配。
『寺子屋! 懐かしい響きですなあ! それは元々コヨミ様のご提案です! こんな感じで、と仰られて! そのお言葉に従いまして、聖教会はあらゆる都市街村にございまして、勉強も教えておりま……』
ブツッ。
音声が遮断。さすがです、寿右衛門さん。
「え、何で通信を切っちゃったんですか。私も色々お話できましたのに」
「いや、百斎さん貴方、遠目からでもお目にかかれた、お話を聞けたとそれだけで滂沱の涙を流す国民がいる位に尊敬されている存在のお一人、聖教会の大司教様でしょう?」
だからダメだよ絶対あのノリ。聞かせたらダメ!
「そうですよ、でもだからこそ出来る事があります! 素晴らしいお話じゃないですか。因みにコヨミ王国に救護所が少ないのは戦争、貧困等による住所不定者が他国に比べ非常に少ないからです。ただ、孤児院と同様、辺境区には確かに存在します。良い機会ですから、マトイ様の聖魔法の講義と共にその辺りも行いましょう!」
『待ちなさい!』
あ、また高度な転移術式の気配。
「ずるいぞ百斎! マトイ様に聖魔法の講義を行うのは交替で、と約束したであろう!」
尊敬されている存在のもうお一人も転移されましたねえ。
あ、救護所と言うのは聖教会の付属機関で、住所不定だったり働けなかったりする方達の為に司祭さんや聖女候補さん達が食事や衣類、生活必需品を提供、住居確保の相談、場合によっては聖教会の宿泊施設を紹介する所です。就職の斡旋も。
こういった取り組みも、コヨミ王国は昔から積極的に行っています。
コヨミ王国聖教会本部、さすがは聖教会の最高峰。そして、我が国の聖教会の全てが素晴らしいです。
ただ、今は。今だけは。
『『早く帰って来て欲しいね』』
うん、その通り。
お留守番チーム皆で待ってますよ、寿右衛門さん。あ、黒白も!
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