はず王子~転生したら大好きな悪役令嬢を断罪する筈の王子だったので勿論婚約破棄せずに幸せになる所存~
第三章終-転生したら大好きな悪役令嬢を断罪する筈の王子だったけれど令嬢は勿論この国も大好きになったので王子として励む所存。
第三章終-転生したら大好きな悪役令嬢を断罪する筈の王子だったけれど令嬢は勿論この国も大好きになったので王子として励む所存。
「ただいま! 喜んで頂けたよ! あ、ありがとう!」
私が考えた仮名は精霊珠殿に喜んで頂けた。
学院長先生からも承認を頂けたので、あとは精霊珠殿が双珠として念話で精霊王様にお伝えして、許しが頂戴できたら仮名として認められるとの事なので、私達は学院長先生の執務室から転移で無事帰還した。
いつお許しが頂けるかは正直分からないそうだ。当然と言えば当然だね。
きれいな焼き目の焼鯖のサンドイッチ、かぼちゃのポタージュ、新鮮シャキシャキなサラダといった整えられた食事が用意されていたのでうがい手洗いの後に寿右衛門さんに感謝しつつ有難く頂いた。
『お帰りなさい! それでですね……。』
そして、食後にソイラテを出してもらってしみじみと味わっていた所、スマホがリュックさんから飛び出したのだった。
録音録画してくれた経過を寿右衛門さん達に早く伝えたいのかなと思ったら、それだけではなかった。
いつの間にか念話をマスターしていたスマホは、自ら進んでリュックさんの中で進化を遂げたいと直訴してきた。
応援のつもりか、ハイパーは書棚から飛び出して、スマホ(仮)の項目を開いていた。着地前にテーブルに浄化魔法を掛けてくれたのはさすがの寿右衛門さん。
『私は先程見せて頂きました』
そうなの、と思いつつ確認したハイパーが開いた頁には、『異世界に適応する為に録音、録画、撮影機能を充実させ、通信機能を一時的に封印。但し、内々に異世界からのメールの受信は可能。封印した機能も、万が一の際には封印解除が可能』とある。
「スマホ、いや、スマさん? カメラさんかな。ありがとう! 私が本気でこの世界の住人になる覚悟を決めたから、常に私の傍に居られる様に考えてくれたんだね。だったら、私も取り敢えずお姉ちゃん達に理由を伝えたいから、貴方を使わせてもらっていいかな」
『お願い致します』
スマさん(仮)の履歴を見たら、驚くことに私が送りたいと思っていた写真が全て送信済みになっていた。勿論品評会結果発表日に撮影した分も。更に、既読の物も、そして未読だったメールも、全て転送? されている。
『勝手ながら大書店内のノートパソコン殿に全てを転送させて頂きました。今後、頂きましたメールをお読みになりたい時にはそちらをお読み下さい』
凄いな、大書店の支配人さん達。もうパソコンを使いこなしているのか。
あちらの基地局とか通信衛星に代わるものを独自に構築して、空間同士で部分的な通信を可能にしているって事? どういう仕組みなのかな。理系としては、是非知りたい。
……いや、今は好奇心よりも優先する事がある。
支配人さん達には後で確認するとして、取り敢えずメールは全て読んで、きちんと私の考えをまとめて、お姉ちゃんと一輪先生とニッケル君にメールを書いた。あと、チュン右衛門さんにも。
『主殿、ありがとうございます。そして、スマホ殿も。また、主殿の転生時にスマホ殿と同様に通話可能と己惚れておりました私をお詫び申し上げます』
寿右衛門さんのきちんとした謝罪にスマさんは、
『お詫び頂く事などございません、それから文は口述でいいですよ』と丁寧に返した。
スマさん(取り敢えずこう呼ばせてもらおう)の言葉に、もう一度礼をして寿右衛門さんがメールの文を伝える。
完成した寿右衛門さんからチュン右衛門さんへの励ましのメールも加えて、送信。
送信できた事もだけれど、私が気付いていなかったわだかまりが一つ消えたみたいだ。良かった。
あとは、ハイパーも含めて皆の写真を撮影。
スマさん自身も入る事が出来る様に、重厚な草花の紋様入りの木彫り枠に囲まれた姿見に反映させて撮影した。
そして、これも送信。これで良し。
もしかしたら、白様の力とか夢渡りとかで手紙のやり取りはできるかも知れないから、これからは手紙を書こう。
そう、私は王子殿下に転生するとは思わなかったものの、自分の意志でこの世界に来た。
それなのに、通信のみとはいえ、あちらと頻繁に繋がる事が出来る可能性が高いスマホを独占し続けるのは違うのでは、と感じる様になっていたんだよね。
最初は白様が「めーるは手紙の一種」として下さったお心遣いに感謝したのだけれど。
私の今の気持ちを尊重してくれたのがスマさんで、ハイパーの応援もあって写真撮影と録音録画機能に特化するべく、リュックさんの中で進化をしたいと決意をしてくれたらしい。
『宜しければ本日の内容もご確認下さい』
スマさんがそう言ってくれたので、取り敢えずお留守番組に話の内容を確認してもらう事にした。
私はその間、医療大臣閣下にお渡しする荷物を作ろう。
そう思っていたら、内容確認の前にお耳に、と不在時に朱々さんが来て下さった話を寿右衛門さんがしてくれた。
ナーハルテ様のご懸念には驚いたけれど、私もたまにナーハルテ様に相応しいかなと不安になる事はあるから、そういうものかと何となく思えた。これも私自信の成長なのだろうか。
多分、転生してすぐだったらうろたえまくりだっただろう。
エルフ族であられる医療大臣閣下と財務大臣閣下のご婦々と、お二人の娘さんであるイケメン令嬢様方々について、か。
『キミミチ』ではぼんやりとしていたその背景には本当に驚いたし、それならば私が辣腕女性騎士さんに転生していても、ナーハルテ様とそういう意味で親しくなれたのかもと寿右衛門さんに話したのは本当だ。
ただ、今となっては、
ナーハルテ様は勿論だけれども、『気』の安定、求者の存在、そして意識体のコヨミさん、出会えた沢山の方々。
これからも、この立場でなければ知る事が出来ない、会えない、行く事が出来ない存在や場所が多数現れる気がする。
それ以上に、第三王子殿下以外に転生していたら、こんなに早く、全身全霊でこの国を好きになり、そして愛する事は出来なかったのではないだろうか。
大好きな悪役令嬢様に会いたいから、異世界に魂の転生。
我ながら、なかなか凄い事をしてしまったと思う。思いはするものの、私は後悔どころか充足感で満たされている。重畳というものだろうか。
勿論、「スマさんの修行を何で許可したかなー私! もっとあちらに連絡したい!」とか、「大書店でコヨミさんのお話をもっと聞いておけば!」とか、後悔する事はこれからまた起きるのかも知れない。
それでも今、私は自分の意志で
転生したら大好きな悪役令嬢を断罪する筈の王子だったから、勿論幸福にするし、私も幸福になります。
そして、いつの間にか大好きになっていたこの国も、彼女と共に大切にしていく所存なのです。
第三章〈終了〉
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