61-大トカゲと私達

 大トカゲ。確かに大きい。


 マイコニドも大きかったけど、ここまでではなかった。副団長さん三人、いや、五人分くらいかな。とすると、10メートル級か。


 大地に潜っていたらしくて、体中に土や泥、木の葉、根っこ、岩なんかが付いている。

 そうだ、恐竜に似ている。

 羽毛みたいなのが体中に、っていう説の方じゃなくて、ちょっと前の、大きなトカゲみたいなイメージの奴。二足歩行だし。


 一輪先生、古書店で論文集とかの資料以外にも図鑑とか購入するのが好きで、領収書を切る事ができる書籍とは別にして個人で購入してたんだよね。


「先人の知識を自分も覚えたいし、知りたいんだよね。確かに今とは違う説も多いけど、知識の蓄積があってこその発展でしょう?」

 良いお言葉だったなあ。


 お姉ちゃんとチュン右衛門さんとニッケル君と仲良くやってるよね、きっと。

 またいつか、会えるかな。


『主殿、今は集中を!』


 いけない、ぼうっとしていた。


 大トカゲ、特に変化なし。

 だからといって油断は禁物。私はこういう所を直さないとな。


「ハンダさん、この大トカゲの弱点調べますか?」

 もうすっかり共闘ムードだから、良いよね。


「あ、ああ。基本はただのトカゲだから、焼くか冷やすか何でもいいんだが、多分すっげえ量の魔石吸ってるよな、きっと」


 ああ、そうか。

 これだけ大きいと中身がどうなっているか分からないから、今までみたいにとりあえず倒す、が危険なんだ。


 マイコニドは胞子を出す前に倒せば良かったから、大トカゲより楽だったんだね。ハンダさんは多分、私達が苦戦していたら助けてくれるつもりだったんだろうな。


 よし、ハイパーとリュックさんのコンビ、お願いします!


 背中のリュックさんのファスナーが開いて、私の手元に薄くなったハイパーが。

 読めと言うことか……。

「皆さん、ちょっと弱点確認してもいいでしょうか」


『大丈夫です。皆様、主殿には私が』

『任せなさい』

『分かりましたわ』

『了解っす』

「じゅったん様、お願いいたします」

「茶色さん、分かったよ」

「グウ」


『『『『『ピヨッ!』』』』』

 ヒヨコちゃん軍団、五羽なんだね。かわいい。


「えーと、八の街郊外平野の二大魔獣の内の一匹、地竜について……。って、あの魔獣、トカゲじゃないの?」


「本当か? いや、王子様の予言書が嘘つく訳ねえしな。え、カバンシ、お前出られるの? じゃあ、、出ろや!」


「うむ、確かにあれは地竜。しかし、トカゲとの半竜だな」

 え、カバンシ……さん、人型になれるの? 

 それにしても、お揃いの革ジャン、革パンツ、革編み上げブーツもそうだけど、何だか、


『うわー、賢そうな青いハンちゃん!』


 言っちゃったよ、この鬼さん。

 ちなみにハンダさんは灰色の髪と目の、爽やか系です。見た目はね。


「あ、緑ちゃんもそう思うか? 実は俺も思ってた! 実際頭いいから助かってんだわ! でも人見知りでなあ、めったにならねえのよ、今日は珍しく「出る」って。皆と仲良くなりたいんじゃねえか?」

 良かった。ご本人もそう思っていた。


 あと、カバンシさん青い印象だったのに赤面して赤になりそうだからハンダさん、あまりいじらないであげて。


 それで、弱点は……。

 あれ、これって。

『主殿、ハイパー殿の知識を他者にお伝えになりたい時は、そのままハイパー殿にお話下さい』


 え、それ良いんだ。

「よし、ハイパー、該当箇所をここにいる皆と聖魔法大導師様に伝えて!」

 こんな感じかな。

 寿右衛門さんが良くできました、みたいにうんうんしてるから合格?


 大トカゲもとい地竜が出てきてから他の魔獣は出なくなった。もしかしたら、地竜、ここの魔獣達の天敵?


「雄の地竜と雌の大きなトカゲとの間に生まれるが、母大トカゲを失った後はその大きさから群れを出され、受け入れてくれた八の街の平野の生き物の為に魔獣を食して生活している。その為に体内は魔石で溢れており、倒すならば先に浄化が必要。ただし、生来の性格は温厚。対応によっては友好的になり得る。すごいですわ、ハイパー様。さすがは第三王子殿下の予言書様」

 ナーハルテ様の透き通る様なお声で読んでもらえて良かったね、ハイパー。


 こんな感じで全員に該当箇所を直接伝えられるんだ、すごいよ超豪華設定資料集ハイパー。感動したからフルネーム呼び。


「そうなりますと、この私が出ませんとな。あ、聖女候補達は私と交代で白様が」


『ギャー、出た!』


「やっぱり威厳がおありだなあ、聖魔法大導師様。さすがの俺も、最初から貴方がいらしてたらセレンを頼みます、って言ってたかもな」

「ハンダ、しかしながらおかげでこの平野の課題が解決しつつあるだろう。お嬢にもいい経験だ」

「まあなあ」

 緑簾さん、頭隠して丸まるのやめて。


 え、カバンシさん、セレンさんと仲良し?

「頑張れお父さんに似てるのにイケメンなカバンシ兄ちゃん!」


「聖魔法大導師様、じゅったん様、ナーハルテ様、朱色様、ヒヨコちゃん様達、頑張って下さいませ!」

「あ、ごめんなさい、ニッケ……王子殿下も頑張って!」

 セレンさんが二回、他の聖女候補さん達も皆で応援してくれた。


 カバンシさん、セレンさんのお兄さん的存在なんだね。魔力にも何らかの影響を与えてるのかも。


「セレン、俺も応援してくれよ……。まだ怒ってんな、ありゃ」

「ハンちゃん、俺も応援されてねえから仲間だよ」


 外見はいいのに何だか哀愁漂う感じの二人は放っておいて、聖魔法大導師様の無言詠唱を皆で見守る。


「じゅったん様、朱姫、良いですか?」


『『はい。』』『『『『『ピヨッ!』』』』』


 あちらからは攻撃してこないみたいだけど、念の為。

 ナーハルテ様を初めとした皆さんが保護防壁魔法、展開。

 ハンダさん、カバンシさん、緑簾さんの肉体派イケメン軍団はいつでも戦える様に臨戦態勢。

 知性派カバンシさんがいてくれるから、安心感がさっきまでと段違い。


 私も、何かできる事ないかな。


『そうですな。この方々ならば安心して主殿の魔力を馴染ませられますから、魔法を使いますか。では、生き物達の浄化を』

 まず、イメージ。

 動物、植物、そして本来は皆の役に立つ魔石達、地下資源。皆に回復を。良く分からないけど、戻って、でいいのかな。

『良いですよ。それを、ぶつけるのではなくて、渡すイメージで、放って下さい』

 寿右衛門さんが言うなら安心。地竜にもあげていいかな。


 浅緋さんなら私の魔法が邪魔なら除いて下さるよね。

 ぶつけないで、渡す感じ。手からほい、っと。


「よし、これでよろしいでしょう。少しお待ち下さい」


 はい、分かりました浅緋さん。


『あ』


 え、寿右衛門さん、私のタイミングが悪かった?


 でも、大丈夫……なんだよね? ね?







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