57-元邪竜斬りさんと私

「背が高くて白金しろがねの髪と瞳の雰囲気があるイケメンと、賢そうな茶色い鳥。あんた、貴方が第三王子殿下か! 俺がセレンの親父、薬師のハンダ-コバルトだ」


 騎士団副団長さんよりは低いかも知れないけれど、十分背の高い、良く通る声が印象的な筋肉質の爽やか好青年。


 とてもじゃないけど、伝説の金階級最年少取得者、邪竜斬りのカーボン(旧姓)さんには見えない。

 よろしくな、って手を出してるけど、いいの? 私達、狩猟勝負をするんだよね?


「ああ、悪いな、俺がセレンを都会にやらねぇってわめいたから、王子殿下と筆頭公爵令嬢様に来て頂く事になったんだろう? まあ正直、令嬢様はともかく、王子殿下は多少は痛い目見てもらおうかと思ってたんだけどよ……」


『!!』

 やばい。


 温厚紳士な伝令鳥寿右衛門さんとできる魔道具リュックさんが臨戦モードだ。


『実際の主様あるじさまを見たらそんな気はなくなったんだろ? じゃあいいじゃねえか。魔獣狩りは普通にやればいい。魔獣を狩れば街の為になるんだろ? あ、俺の事はりょくって呼んでくれ。主様の鬼の召喚獣だ』


「お、おう。そう言ってくれたら助かる。王子様はさすがだな。こんなに気持ちのいい奴を召喚獣にしてる人間が、悪い奴な訳ねえや」

『あんたも娘思いのいい奴みたいだな』

 がっしり。

 太い上腕二頭筋同士の固い握手。


 なんか仲良しだね。

 でも、緑簾さんがいてくれて助かった。キレた寿右衛門さんとリュックさんて、多分白様案件だよね。


『……まあ、そうですな。それでは凍結しましたこの魔物はお預けして良いでしょうか。ゲームの日程についてはこちらからご連絡致します』


 良かった。いつもの穏やか寿右衛門さん。


「え、こいつ結構良い素材だぜ? いいのか?」

「どうぞ、ああ、もしできたら街の皆さんと、七の街の方に還元して下さい」


 いいよね、寿右衛門さん。

『良いご判断と存じます』


「王子殿下! あんたすげえなあ! セレンが、今回家に帰れたのはあんたのお陰だから絶対にけんかなんか売るな、売ったら絶交! って言うから狩猟にしたんだけど……。ネオジムにも、都会で学ぶのはセレンの為になる、皆さん良い方達だった、なんで分からないの分からず屋! って言われてさあ。肩身が狭かったんだよな」


『分かるぜ邪竜斬り! 俺もさあ、心技体の心が足りないとか第三王子殿下にお仕えするなら礼儀作法を何とかしろとか叱られてばっかりでよお……』

「そうか。お互い苦労してんだなあ。……どうだい、付き合えるか?」


 え。

『ああ、良いですよ主殿。もう緑のものは召喚獣ですから、主殿にご迷惑になる様なおかしな行為は致しません』

「そうなの? でも、あれってご飯のお誘いじゃないよね? 飲みに行くとかならお金を渡さないと」


『大丈夫です。浅緋うすひ殿が第三王子殿下のご迷惑にならぬ様にと、金銭の価値なども教えてくれております。それ故に、精霊界から自前の金品を持参して、この国の貨幣に換金しまして所持しております。かなりの額ですが、適正な金額以外は出せぬ様に浅緋殿に聖魔法を掛けて頂いた特製巾着財布ですので。場合によっては強制力で浅緋殿の元に財布と緑のものが強制送還されますからご安心を』


 あ、そうですか。それは安心安全だね。


『よっしゃあ、とっとと解体して飲みに行こうぜ!』

「おう、緑、まずは傘と胴体を切り離すから、待っててくれ! よっしゃ、竜閃斬りゅうせんざん!」


 うわあ、刀じゃなくて手刀なんだ。多分あれで竜をやっつけたんだよね。


『そうです。無詠唱で斬る事ができるのも緑のものと一緒です。さあ、私達は戻りましょう。正直、疲れました。リュック殿もですね』


 私の頭の上だから見えないけど、寿右衛門さんのその疲れ、多分、マイコニドのせいじゃないよね。


 少し揺れているリュックさんもお疲れ様。


 私達は、帰ってお茶でも飲もうね。





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