トラ柄ビキニで家に来た先輩を無視し続けたら泣いた

殻半ひよこ

ここまでのあらすじ。無視され続けた先輩が突如泣きだしたが、泣きたいのはこっちのほうだ。

先輩「……うぅ……うぅぅぅぅぅぅ……」

後輩「…………」

先輩「ずびゅっ……ぐじゅっ……はびゅ……」

後輩「…………」

先輩「……………………しゃむぃょぉ…………」

後輩「…………」(ブランケットを投げる)

先輩「しゃァッ!」(ブランケットを弾く)

後輩「いやマジで何なんすか?」

先輩「……はっ!? ネコ科の本能が!? じゃなくて! うふふふふふふ、やっとこっちに反応したじゃん、後輩!」

後輩「そうですね。嗚咽とハナ啜る音と弱音につい同情した俺が悪かったです。引き続き無様活動ブザカツに勤しんでください。ソシャゲの周回してますんで」

先輩「そんな趣味はねーんだわ! 君はいったい私のことどう思ってるのかな!?」

後輩「言ってもいいですけど後でクレームつけないでくださいね? 変人、変態、社会常識を持っているだけで装備してない女、」

先輩「そのあたりにしておこうじゃあないか。私の精神力を買いかぶるなよ……?」

後輩「まさか。むしろまだまだ見くびっていたと反省しました。よくその格好で家まで来れましたね。上着とSAN値どこで落としてきたんですか。自分のキャンペーンに戻ってください。ここはごく普通の世界なんで」

先輩「もー、ああ言えばこう噛むアーカム! つくづく先輩のイメージダウンに熱心な後輩だねえ! 何も私だってこのカッコのまま往来を走りまわってきたわけじゃないよ!」

後輩「ほー。そんじゃ何ですか、うちに入った瞬間ハジけとんだとでも言うんですか、着てた服が。そんならこっちだってそんな事情をつゆ知らず、非礼を謝らなきゃならんですねえ」

先輩「着てきたコートは玄関で脱いだだけ! お母さまにもその場で許可貰ったもん!」

後輩「何してんすか先輩」

先輩「安心して、ちゃんと用途も言ったよ? これからお宅の息子さんにサプライズを仕掛けるんですが構いませんね! って!」

後輩「何してんだ母」

先輩「“あらあら、素敵な水着ねえ”って褒めてもらったからさー! 元からマックスだった自信を更に強めて来たのにさー! 君ときたら! 今年度暫定一位のだめ後輩! 私のことはいいけど、親の顔に泥を塗るのはやめなさいよ! ……いややっぱ私もだめだわ! 先輩もだいじにしろ! わかりましたか!?」

後輩「すみません、何一つわかりたくねえですね。――いややっぱ申し訳なくねえわ。今のすみません、キャンセルで」

先輩「ぶぶー、もうおーそーいーですー! 後輩の『すみません』、既に発送されて開封されて食べちゃいましたー! 星5つ! いいね! ブクマ! 長文感想! まろやかなあじわいでした! さて、ご存じの通り『すみません』を受け取ったからには、後輩は私につぐないをせねばならないよね! お゛お゛ぅ゛ん゛!?」 

後輩「新年に聞いていいレベルのダミ声じゃない」

先輩「ズバァリ! 先輩の水着、どうかな!? やさしい先輩が、新年から後輩の御多幸を願って、縁起物フォルムでやってきたぞっ!」

後輩「え、マジかわいくてマジそそられてますけど。昨年のウシ柄ビキニ同様」

先輩「……………………」

後輩「いや実際、この点俺も責任を感じています。軽率でした。一週間前のクリスマス、丑年限定ホルスタサンタとかいう悪魔合体フォルムを仕掛けてきた先輩を、本音半分面白半分でむやみやたらと褒めそやしたこと。その誤った成功体験が、こんな軽率な考えを生んでしまった。いいですか、先輩のスタイルはですね、ジョイスティック押し込みで任意に効果音の出せそうなくらい『うぉ、でっか……』なんですから、使いどころには細心の注意を払ってください。通りすがりの少年の未来を歪める危険性だってあるんですよ。俺みたく」

先輩「あ、は、はい、すみませんでした……。…………あれ? え? え、え?」

後輩「よかった。反省してくれたなら、必死で我慢した甲斐がありました。まったく、しんどいことさせないでくださいよ。……さて、デイリー終わったし初詣行こうと思うんですけど、一緒に行きます? っていうか、行きましょう。行きたいです。駄目ですか?」

先輩「…………あのさあ。後輩さあ」

後輩「なんでしょう」

先輩「君……案外、肉食系だよねえ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

トラ柄ビキニで家に来た先輩を無視し続けたら泣いた 殻半ひよこ @Racca

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ