The boss next to me.
無事? トリプルデートが終わりウタイを横に置いて運転しながら俺はぽつりと呟いた。
「チカが悪巧みをしたし俺も悪巧みをしてやるか」
ぽっと出た呟きをするりと聞き取ってウタイは「キイくんが怖い顔をしてるッス」とふるりと身体を震わせた。
「いやー、ね? チカもユウも俺を驚かした訳だから俺からも驚かしを、って思ってなあ」
「驚かしって、何をするんスか?」
「んー、適当な夜景を見ながら話そうぜ」
「ッス」
俺は車を走らせ夜景のキレイなレストランへ向かった。
道中の車内は静寂に包まれていた。
立てばアイドル、黙ればアイドル、口を開けば野性的。
自分でもそれを解っているからだろう、誰かが話さないとウタイは口を開かないしごく身内以外にはなるべく口調が変わる。
車を走らせる事数分で記念日に利用しているレストランに辿り着いた。
山の中腹にあり店内から街の夜景が一望できる。
まあ、予約無しのゲリラ突撃だったので窓側の席は全部埋まっていたが。
夜景の見える様で見えない一番奥の席に通され適当に料理をオーダーした所で俺はウタイの左手をとった。
「ウタ、ウタイ。いきなりで悪い。俺と結婚してくれ」
言いながらウタイの薬指に指輪を着けた。
ウタイは突然の事に慌てる、事も無くきゅっと唇を合わせ真っ直ぐな視線で俺を見つめていた。
指輪を着け終わると俺の手をきゅっと握って一呼吸置いてから「ッス」とだけ言った。
「解ってたって顔だな」
「……ッス」
「もしかしたらシユさんとアマさんに聞かされてた、とか?」
「……ッ」
ぽっとウタイの頬が赤く染まる。
「そんな顔も出来るんだな、ウタイ。可愛いな」
「うちは、可愛くなんて……」
「可愛い。自身を持て、アイドルなんだから」
そうだ、ウタイはアイドルなんだ。
「俺だけのって言ったらファンから袋叩きになるな」
「ならねッス。キイくんはうちの倶楽部のボスみたいな立ち位置ッスから」
「マジで言ってる?」
「議会の時に出てるらしいッスよ。オカシラが居ないと調子でねえなって」
「オカシラって誰だよ。つーか、ファンミーティングを議会って言うな」
「なんて言っても中身は変わらないッスから」
「まー、そうだけどよ。お前、アイドルなんだぜ?」
「うちは、もうキイくんの妻としての道でもいいんスけど」
「言う様になったな」
「言わせてるのはキイくんッスけど」
真っ直ぐ見つめてくるウタイの視線がなんだかむず痒い。
そんな俺を見てウタイはにやりと笑った。
「同志の言った通りスね。同じ顔してッス」
「何の同志で、何の同じ顔だ……」
訳が分からん。
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