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 運転席に座って助手席へ顔を向けるとウタイは「ッス」と頷いた。

「あー、改めて紹介するけど。俺の彼女、カナデ・ウタ。本名は教えない」

「ヨロシクおねがいするッス」

「俺は兄のチカ。この子は俺の彼女のセイ・シユ。よろしくね。カナデさんの話は聞いていたけどギャップが凄いね」

 チカはウタイの自己紹介を聞いて変な顔になった。

「先ほども自己紹介しましたがチカちゃんの彼女をしています。セイ・シユです。よろしくお願いします」

「次は俺か。俺は真ん中のユウ。この人が妻のアマちゃん」

「ん。よろしくお願いするわね」

 アマさんはそう言ってユウの腕に抱き着いた。

 うーん、でかい。

 何がって訳じゃ無いけど。

「キイくん。ナニを見てッス?」

「いや、見てねー。何も見てねー」

「ふふっ。わかりやすいのは3人ともみんな一緒」

 シユさんはそう微笑んだ。

 俺ってわかりやすいのか?

 そう思ってバックミラー越しにチカとユウの顔を見ると同じ顔をしていた。

 それで察した。

 俺ら3人は全員が彼女に”わかりやすい”って言われてんだな……。

 

 変な気持ちになりながらエンジンをかける。

「で、チカ。場所は本当にここでいいのか?」

「うん。カーナビ無いけど、行ける?」

「あ、うちがナビするからだいじょぶッス」

「あ、カナデさんはナビも出来る人なんですね」

「色々とやりまッしたから」

 ウタイは遠い目をした。

 あのゲリラロケで鍛えられたんだよなあ。

 俺と初めて会ったのもあの番組だし縁が切れねえからなかなか辞めさせて貰えねえんだよなあ。

「凄いわねえ。ワタシは出かける事が稀だからユウに引っ張って貰わないと道が判らないわ」

「そうなの? もっと外に出ないとだめ」

「そうは言ってもなあ。アマちゃん、本当に引きこもりだし」

「軽い所から体験して行かないとだめ」

「そうッスよ……。いきなりマジ体験すると絶望的にきついッスから……」

「そう……。ウタさんが言うと重みが有るわね……」

「呼び捨てでいいッスよ。うちたち同志ですし」

 同志、とは。

 そう聞きたかったがすぐにウタイのナビが始まってしまった。

 ナビモードのウタイは集中力が凄い。

 こうしないと生き残れなかったからそうなってしまったと言うかナビゲーションをする機械みたいになる。

 

 

 

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