Relieved.
ここ最近のネット使用の加速具合は早すぎる気がする。
個人番号を使って簡単に婚姻届けの提出が出来るなんて……。
「アマちゃんがぴらぴら見せてきた紙は一体……」
「あれは”紙の”婚姻届け」
「もしかして、アピールの為だけに?」
俺があんぐり口を開けると「ん」と頷くアマちゃん。
「外には出てないわ。役所のサイトに行ってプリントアウトするだけよ? ね、簡単でしょ?」
いや、まあ簡単だけどさあ……。
「そこまでして俺を囲い込まないと駄目な理由って、あるの?」
「昨日も同じ様な事を言ったけど貴重な出会いなのよ。それに……」
「それに……?」
「この部屋の以前の姿を思い出せるかしら?」
「……、惨状?」
アマちゃんはゆっくりと頷き、腕と脚を組んだ。
「あの惨状はもう嫌なの。快適なのは手放せないわ」
「いや、快適な暮らしは分かるけどさ。なんでアマちゃんが偉そうに言うんだよ」
「だから、だからね? ずっと一緒に居て……。ね?」
「その偉そうな体勢で言われてもなあ……」
まあ、こっちのアマちゃんが素なんだけど。
「誠意が足りない」
「誠意? 幾ら積む?」
丸を作った指を目に当てるアマちゃん。
以外に似合うけど。
「金の話じゃねーよ」
「じゃあなあに? カラダ?」
寄せ上げてアピールするアマちゃん。
さっきまでじっくり見たので反応せんぞ。
「さっきまで一緒の布団の中に居たろ」
俺は「朝飯にすんぞ」と立ち上がりキッチンへと向かった。
長期保存出来るパンをふたつとアマちゃん用のマグカップを持って元の部屋に戻ると「ん」と両手を広げてアマちゃんが待っていた。
「飯にすっぞ。今日は何にする?」
「んー? 紅茶。ミルクティー」
「わかった」
俺がミルクティーを作っている間もアマちゃんはずっと同じ体勢だった。
パンとミルクティーを目の前に置いても同じ体勢を維持し続けていた。
「結局、何の待機だ?」
「抱擁の待機」
「抱擁」
「ワタシが家族になる。ユウの家族になる。二人三脚で生きる。受け入れて? ワタシの傲慢も」
その言葉に俺は大きく笑った。
「お前が傲慢なのは知ってる。よく知ってる」
俺はそこで言葉を切って彼女に抱きついた。
「もう受け入れてるよ。受け入れてなかったら何年も一緒に居ないって」
俺が力を入れるとアマちゃんも入れ返してきた。
「ん」
その呟きには安堵感がこもっていた気がする。
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