無限創造の力を手に入れたので、ゲームの自キャラをニンゲンの女のコにして、いっしょに異世界で暮らします

曲がりネギ

第1話 天界

天界のすみっこに、やや小ぶりな祭壇があった。

階段状の祭壇で、ちょっと見た感じだと、マヤ文明の階段ピラミッドぽい。

ただ、天界の祭壇だし、地中から発掘されたわけでもないので、白磁のように真っ白だった。



日頃は、その存在すら忘れられそうになっていた祭壇だったが、いま、この祭壇の周囲には、数え切れないほどの神々が集っていた。


つい先程、この祭壇から、激しい光の柱が立ち昇ったからだ。


正確には、祭壇のてっぺんに安置されているひつぎから、まばゆい光が発せられていた。

棺といえば、吸血鬼の寝床を連想しそうになるが、ここはいちおう天界。

棺は、祭壇と同様に、真っ白な石棺だった。



この白い石棺は、とある【試練】への、入り口であると同時に出口だった。

ただ、これまで、永劫にも近い時のなかで、この【試練】から帰還を果たした者は、ほとんどいない。


いちど、足を踏み入れれば、二度と帰ってこられない一方通行とも言うべき入り口。

ゆえに、棺をかたどっている…と、太古より語り伝えられていた。



ところが、いま、その石棺から、光の柱が立ち昇った。



それは、紛れもなく帰還を意味していた。

【試練】すなわち【歴劫の試練】から帰還を果たした者がいるのだ。



それは、まさしく奇跡。



日頃から奇跡を切り売りしていて、奇跡などコンビニの弁当ていどのモノとしか思っていない神々にとってさえ、それは、にわかには信じがたいほどのホンモノの奇跡であった。



神界のかたすみ。

忘れかけていた祭壇に、数え切れないほどの神々が参集してきたのは、その奇跡に立ち会いたいと願ったからだった。



ゆえに、祭壇の周囲に集い来たった神々は、みな、ひざまずき、頭をれていた。



『…偉業は、成し遂げられました』



神々の取り囲む祭壇いったいに、厳かな声が響いた時、石棺のふたがずりずり、ずずーんと床に落ちた。


そして、石棺の中からは、黒目黒髪の少年が、ひっこりと顔を出した。



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