タイムトラブラー〜タイムスリップしたら「ひとり七人の侍」する羽目になってしまった〜
達見ゆう
第1話 ポンコツ異能力者
俺は超能力者だ。時間を行き来するというとかっこいい響きだが、そんな大層なものではない。
とにかく能力が中途半端能力なのだ。まず行くタイミングが選べない。主に過去へ行くが時代も選べない。滞在時間も長くて二、三時間ほどだ。
しょうがないから見学する程度なのだが、この現代の服装は異端に見えるため時代によっては不審がられ、トラブルになることも少なくない。
かと言って、洋装になった近代に飛んでもなぜかトラブルを引き起こしてしまう。
移動したらちょうど犬の尻尾を踏んでしまい、追いかけられたりと、大抵は小さなトラブルだが、下手すると連鎖反応的なトラブルを起こしてしまうこともある。
昭和だか大正だか知らないが、移動した瞬間に片手に蕎麦を持ってチャリに乗って配達してた蕎麦屋にぶつかり、こぼれた蕎麦を踏んだ人が滑って転び、その人の後ろにいた別の人にぶつかるという、なんかのコントかと思う連鎖事故もあった。
俺のせいで事故になったと認識した直後に再び能力が発動して現代に戻ってしまったわけだ。あの人たち、大丈夫だったかなあ。
他にも、到着した途端、飛脚とぶつかって吹っ飛ばされたりと、何かとトラブルになりやすい。いやあ、飛脚ってマッチョだな。昔はあんなのがゴロゴロしてたのか。あの時は打ち身の痛みがしばらく出て大変だったから、現代にすぐ戻れてよかったと思う。医者に怪我の理由をごまかすのには苦労したが。
話が逸れた。だから俺はタイムトラベラーならぬ『タイムトラブラー』と自虐的に名付けた。
おっと、このめまいの感覚はまた能力が発動してしまったようだ。今度こそどの時代でもおとなしく隠れるなりじっとしていよう。
って、おい、今日はこれから遊びに行く準備中だぞ! 待ってくれ! せめて遊び終えてからにしろよ! この格好は人のいる時代だとどんな時代でも速攻で不審者か敵として攻撃されるぞ!
俺の焦りとは裏腹にめまいがひどくなって時間移動する感覚に陥っていった。薄れゆく意識の中で行き先で何か使えないか慌ててザックを引っ掴んだのは果たして正解だったのだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます