第8話

 普段は天然な性格だが、聖女としての霊力も魔力も歴代最強クラス。しかし異界の竜族に姿を奪われこの世界を滅亡の淵に追い込んだフランチェスカ。彼女が再び姿を現したのは、最後に目撃されてから三ヶ月が経過していた。最後に目撃された王都近郊からはるか辺境の地で。


 「こんなに痛いから夢じゃないよな。それとも幻覚をみている?」


 フランチェスカは自分の体のあちらこちらを触りまくっていた。胸や股間などとても聖女だった少女が外でやるようでない事をしていた。一通り触りまくった後でその場に崩れ落ちた。


 「やっぱり・・・女の身体だ。どうすればいいのだ・・・」


 フランチェスカの姿をしているが、中に宿る魂はアベルだ。気が付いたら聖女の身体にいた。考えられるのは、フランチェスカの姿を奪った奴の仕業だと。その可能性しかなかった。


 「これからどうしたらいいのだろう?」


 とりあえず服を調べたが、聖女としての道具も小銭すら持ち合わせはなかった。文字通り着の身着のままで放り出されていた。


 「それにしても、ここはどこだろう? なんだか懐かしい気がするし」


 周囲を見渡すと人の気配がしなかった。どうやら農場の真ん中のようだった。でも遠くに見たことがあるような塔が見えた。どうやら何らかの宗教施設のようだった。


 「とりあえず、あそこに行ってみよう」


 アベルの魂が憑依したフランチェスカは歩みだした。

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