第4話 突撃

 「姿を盗む竜族だと?」


 アベルの記憶の中に、以前聖女を務めていた姉のシモーネの言葉が蘇った。昔、戦った竜族に人間の皮を被って騙そうとしたやつがいたと。


 「はい、おそらくは・・・フランチェスカ様は敗れてしまって・・・」


 「わかった。みな言う事はない」


 この時、目の前にいるフランチェスカの中身は別物になっていて、本当のフランチェスカは殺されたのだと分かった。


 「ならば・・・遠慮なしに戦っても構わないってことだな」


 アベルら殿の部隊は全滅を覚悟して突入する事にした。最悪でも聖女の姿と能力を奪った敵を葬ろうというわけだ。聖女が本来使うはずの武器をアベルが持って中央突破を図った。


 「突撃!」


 だが、前方の防御が手薄なところに突入したが後ろから伏兵が現れ挟撃されてしまった。そのうえで四方八方から激しい攻撃魔法がかけられ、敵兵を討ち取る前に散華していった。そしてアベルも腕を吹き飛ばされ、腹に致命傷を負いその場に倒れた。


 「くそう・・・これまでか・・・」


 その時、身体が宙に浮かんだような気がした。それはフランチェスカいや、彼女の姿を盗んだ神通力によるものだった。


 「ふん、お前が聖女だったらなんとかなったかもしれないな」


 「おのれ!」


 アベルは空中で地団太を踏んでいた。でも、命が絶えるのも時間の問題であった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る