第3話 竜族

 異界の門をくぐり抜けてくる魑魅魍魎のうち特に脅威とされるのが竜族と呼ばれる存在だ。そいつらは知能戦に優れただ闇雲に暴れまわる連中よりも厄介だった。フランチェスカの周囲にいるのは、それら竜族であった。これらを撃退するに数個師団と複数の聖女が力を合わさなければならないはずだった。


 しかし、その聖女が軍門に下っていた。とてもではないが勝ち目はなかった。出来る事といえば足止めするしかなかった、全滅を覚悟して! アベル達は残存兵力を逃がすことに成功したが、完全に取り囲まれていた。その中心にいたのがフランチェスカだった。


 「フランチェスカ様! 目を覚ましてください!」


 アベルに付き従っていた兵たちは悲痛の叫びを投げかけていた。しかし彼女は不気味な笑みを浮かべていた。そこには聖女の面影はなかった。悪女そのものであった。


 「目を覚ませだと? もうフランチェスカなどという聖女は存在しない。お前らの目の前にいるのは抜け殻を被った俺様さ!」


 アベル達は意味がわからなかったが、側近の一人がアベルにこういった。


 「もしかすると・・・フランチェスカ様は殺され皮をはがれたのではありませんか? 聞いたことがあります。姿を盗む竜族がいると」

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