第309話 苦手な食べ物

 食卓にキュウリが。


キュウリが苦手なおくさんはそれを見詰める。


「食べたくない?」

「いや……」


おくさんはしばらく考えて、


「キュウリが大好物の生物の気分になれば多分いける」

「さっさと食べればいいのに」


おくさんが自己催眠モードに。さっきよりも力強くキュウリを見詰める。


と、急に肩を震わせ始め、


「……よくもホームセンターで狭い箱に閉じ込めて七百円とかで売りやがって……」

「ヤバイなんか鈴虫を超越した何かになってる」


口に唐揚げを突っ込んでやると人間に戻った。


「肉食ったら治ったわ」

「キュウリは食べたくないんだね」

「あい」


実は鈴虫はタンパク質が不足すると共食いするくらいには肉食べる生物だから肉食っても鈴虫、って事実をおくさんが知ってたら次回から『僕の鈴虫』になっていたかも知れない。

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