ハンドレッドライフ

赤眼鏡の小説家先生

001 『100歳を過ぎて、人類に対して無益、又は有害となるものは、殺処分とする』

 3421年。それなりに遠い未来の話。


 人類は遂に、不老不死の領域にたどり着いた。

 テロメアが再生し続ける事によって、大きな交通事故等にあわなければ永遠に生き続ける事が可能となり、医療の発達により病気で死ぬこともない。


 ––––だが、同時に大きな問題も生まれた。


 人が死なないということは、人口が増え続けるということである。当然、食料にも困るし、住む場所なんてのも奪い合いになる。

 五百年前くらいに、地中や宇宙空間まで使い居住区の新規開拓を行ったのだけれど、それでも足りなかった。


 そのため、世界ではあるルールが執行された。


『100歳を過ぎて、人類に対して無益、又は有害となるものは、殺処分とする』


 多いのなら、減らすしかない。当然の考えである。昔人口の多い国にあった(国の名前は忘れてしまった)、『一人っ子政策』なんてのはそれに近しいものかもしれない。


 だが、この制度ににより、社会の競争は激化。全ての人類は勉学、スポーツに勤しみ、自らの価値を示そうとした。


 を通過するために。


 査定。百歳になった時に受ける査定。

 その査定をパスしなければ殺処分である。仮にその査定を通過したとしても、十年毎に再び査定があるので気は抜けない。

 誰しもがこの査定をパスするために努力を続けるのだが、百歳を超えること自体が狭き門だし、二百歳以上の人となるとほとんど居ない。


 相当厳しい査定である。電球を発明したくらいじゃ査定は通過出来ないし、タイムマシンを作ったくらいでも(まだ誰も作れていないけど)、査定は通過出来ない。


 世間では、査定なんてのは名前だけで、実際は人の数を減らす口実に過ぎないと言われている。

 まあ、世の中に不条理な変なルールがあるのは昔から変わらないとも言える。


 それから、その査定をしているのは人ではない。『MJ』と呼ばれる人工知能が査定を行っている。人がやるよりも機械に任せた方が平等ってわけだ。

 これには賛否両論あるらしいけど、今更世界のシステムを変えるわけにもいかず、有耶無耶うやむやになっている。

 僕としては……、どっちでもいいって感じだけど。


 さて、そろそろ僕の自己紹介でもしようか。


 僕の名前は性は「山田」で、名前は「太郎」だ。笑ってくれていい、クラシカルな名前だと、よく言われる。

 外見についても少しだけ触れておこう。歳は十八くらいで止まっている。

 もちろんどこで成長を止めるかなんてのも自由だ。(人によっては五歳とかで止めている人もいるらしい)。


 身長は百五十三センチ、大きい方ではない。むしろ小さい方だ––––かなりね。

 身長もある程度コントロール出来るのだが、人が多い世の中だ。小さい方が幅を取らないため人気がある。税金も安い。食べる量も少なくて済むしね。


 顔は、多分普通だけど、これもあんまり関係がない。

 顔で判断されない世の中になったからだ。僕が生まれる少し前までは、まだそんな風習があったらしいが今はそんなのは過去の歴史である。

 外見なんて好きに変えられるのだから、中身が重視されると言えば分かりやすいかもしれない。

 アイドルや二次元のキャラはみんな可愛いからその中身を好きになる、と千年くらい前の『OTAKU』が言っていたらしいけど、正にその通りだと思った。

 査定においても、見た目の良さというのは一切考慮されないし。


 あぁ、そうだ、そうだ。忘れてた。一番重要なことをまだ言ってなかったね。

 まだ僕の、年齢を言っていなかったね。


 今年で、1151歳になるよ。

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